当・宛(読み)あて

精選版 日本国語大辞典 「当・宛」の意味・読み・例文・類語

あて【当・宛】

[1] 〘名〙 (動詞「あてる(当)」の連用形の名詞化)
物事を行なうときの、目的や見込み。目あて。心づもり。「あてが違う」「あてが外れる」など。
山家集(12C後)上「五月雨はゆくべき道のあてもなし小笹が原も埿(うき)にながれて」
② 頼みになるもの。たより。→あてにする
※虎寛本狂言・米市(室町末‐近世初)「有様(ありやう)は私もこなたをあてに致いて参りましたが」
③ 借金をするとき、それが返せない場合、貸し手が自由に処分してよいとする保証の物。抵当
史記抄(1477)一二「椹質はあての事ぞ」
④ 物を打ったり切ったりなどする時、下に置く台。
書紀(720)雄略一三年九月(前田本訓)「石を以て質(アテ)と為(し)
⑤ 補強したり保護したりするためにあてがうもの。「肩当て」「胸当て」など熟して用いることが多い。
こぶしで、相手の急所を突くこと。当て身。
※浄瑠璃・本朝二十四孝(1766)四「ひらりと付け入る勝頼を、さしつたりと真の当(アテ)
⑦ (宛) 文書や手紙などの差し出し先。
※近世紀聞(1875‐81)〈染崎延房〉四「御憐察遊さるるやう歎願なせる趣きを右小弁家の宛(アテ)にして」
⑧ 食事のおかずをいう、演劇社会などの隠語
※浮世草子・当世芝居気質(1777)一「ホヲけふは何とおもふてじゃ大(やっかい)な菜(アテ)(〈注〉さい)ぢゃな」
⑨ 酒のさかな。つまみ。
馬術で、馬の心を動かしたり、驚かすもの。あてもの。
木材一部分だけが、反りやすく、抗力の弱くなったもの。また、質の悪い木材。〔日本建築辞彙(1906)〕
⑫ 檜(ひのき)で作った火縄。〔随筆・甲子夜話(1821‐41)〕
[2] 〘接尾〙 (宛)
品物などを等量配分することを表わす。
(イ) 配分する物を示す数詞の下につく。ずつ。
※宇津保(970‐999頃)藤原の君「漬豆を一さやあてに出だすとも」
(ロ) 配分を受けるものの単位を示す数詞の下につく。あたり。
縮図(1941)〈徳田秋声〉裏木戸「一人あて千五百円の金が」
② 文書や手紙などの差し出し先を表わす。「会社あての文書」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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