後めたい(読み)うしろめたい

精選版 日本国語大辞典 「後めたい」の意味・読み・例文・類語

うしろ‐めた・い【後めたい】

〘形口〙 うしろめた・し 〘形ク〙
① ある事態に対して感じる不安な気持を表わす。気がかりだ。心配だ。心もとない。主に、時間的に、あるいは空間的に自身の目の届かないものである場合や、ある事態に関して欠点弱点などが感じられる場合などに用いられる。後ろべたい。後ろめたなし。
古今(905‐914)秋上・二三七「をみなへしうしろめたくも見ゆるかな荒れたる宿にひとり立てれば〈兼覧王〉」
② ある人物の心や行為に対していだく不信警戒などの批判的気持を表わす。信用できない。気が許せない。油断がならない。あぶなっかしい。
※枕(10C終)一〇四「やがて御屏風にそひつきてのぞくを『あしかめり。うしろめたきわざかな』と」
③ 他から疑惑、不信、軽蔑などの目で見られるような点が自身の側にあること、または、あると思い込んでいるところからくる心の動揺(おもに罪悪感羞恥心、気持の負担など)を表わす。気がとがめる。気がひける。気恥ずかしい。
源氏(1001‐14頃)若菜下「かくうしろめたき筋のこと憂きものに思し知りて」
司令休暇(1970)〈阿部昭〉一「自分の言い分が所詮はうしろめたい負け犬のセリフにしか聞こえない」
[語誌](1)「うしろへ(後方)痛し」の変化した語。後方から見て気がかりな気持や状態をいうのが原義。後ろの方が気がかりだの意とする説や「うしろ」を将来の意とし、対象の行動や状態が未来において不安をはらんでいるとする説もある。
(2)平安時代は①の不安な気持を表わすのが主で、②③の用例は中世以降に多くなる。対義語は「うしろやすし」。
うしろめた‐が・る
〘自ラ五(四)〙
うしろめた‐げ
〘形動〙
うしろめた‐さ
〘名〙

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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