従・随・順(読み)したがう

精選版 日本国語大辞典 「従・随・順」の意味・読み・例文・類語

したが・う したがふ【従・随・順】

[1] 〘自ワ五(ハ四)〙
① あとについて行く。随行する。おともをする。
源氏(1001‐14頃)玉鬘「したがひきたりしものどもも、るいにふれて逃げ去り、もとの国に帰り散りぬ」
※虎明本狂言・釣狐(室町末‐近世初)「きつねと云ものは〈略〉あたかもみにかげのしたがふごとく、かやうに執心のふかきものにて候ぞ」
② 相手の勢いに負けて降参する。服従する。
書紀(720)雄略二三年七月(前田本訓)「百姓艾安(をさまりやすく)て四夷(よものひな)賓服(まうてきシタカフ)
平家(13C前)一「是等は皆旧主先皇の政にもしたがはず」
③ さからわないで、言うなりになる。
※竹取(9C末‐10C初)「おのがなさぬ子なれば心にもしたがはずなんある」
④ 自然の力、欲望などに動かされるままに任せる。
蜻蛉(974頃)上「まつしまの風にしたがふ波なればよるかたにこそたちまさりけれ」
徒然草(1331頃)二一七「欲に随て志を遂げんと思はば、百万の銭ありといふとも、暫も住すべからず」
⑤ 道、川などに沿って進む。たどる。
※西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)九「時に彼の衆の魚も、亦復随逐して、崖に循(随也)ひて行く」
⑥ きまりや習慣などのままに行動する。
※大慈恩寺三蔵法師伝承徳三年点(1099)七「西域の制度に放(なら)ひて、此の旧式に循(シタカハ)ず」
物事の程度に応じる。また、時、場所、状態などに順応する。
※蜻蛉(974頃)中「あはれ、ほどにしたがひては、おもふ事なげにても行かな」
方丈記(1212)「世にしたがへば、身くるし。したがはねば狂せるに似たり」
⑧ ある物事が、他の物事の変化に対応する。
※大鏡(12C前)六「まづ申すべきことをも、ただおぼゆることにしたがひて、しどけなくまうさん
※平家(13C前)二「月日のかさなるにしたがひて、我身の年のゆく事をば歎かずして」
⑨ ある事にたずさわる。従事する。ある仕事につく。
※書紀(720)神功摂政前一〇月(北野本南北朝期訓)「八十艘(やそ)の船に載せて、官軍(みいくさ)に従(シタカハ)(し)む」
太平記(14C後)四〇「帯剣の役に随へり」
[2] 〘他ハ下二〙 ⇒したがえる(従)
[補注]接続詞「したがいて」「したがって」は(一)⑧の用法から出たと見られるが、その動詞性から「したがいまして」の言い方が丁寧な語法として近来現われている。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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