御厨子所(読み)みずしどころ

精選版 日本国語大辞典 「御厨子所」の意味・読み・例文・類語

みずし‐どころ みヅシ‥【御厨子所】

〘名〙
宮内省内膳司に属し、天皇御膳を調進し、節会などで酒肴を出す役所別当・預・小預所衆膳部などの官人を置く。〔延喜式(927)〕
源氏(1001‐14頃)藤裏葉「みづしところの鵜飼の長、院の鵜飼をめしならべて、鵜をおろさせ給へり」
食事を調理する所。貴人の家の台所
※宇津保(970‐999頃)吹上上「これはみかしき。〈略〉みづし所のざうしめの、うちはや着てあり」

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デジタル大辞泉 「御厨子所」の意味・読み・例文・類語

みずし‐どころ〔みヅシ‐〕【×厨子所】

宮中で天皇の食事や節会せちえ酒肴しゅこうをつかさどった所。内膳司ないぜんしに属し、後涼殿西廂にしびさしにあった。
食物を調ずる所。台所。
下衆げすども、皆はかばかしきは―などあるべかしき事どもを」〈・手習〉

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改訂新版 世界大百科事典 「御厨子所」の意味・わかりやすい解説

御厨子所 (みずしどころ)

平安時代以降,蔵人所の支配下にあって天皇の供御(くご)関係のことを弁じた所。初見は889年(寛平1)。後涼殿の西庇に置かれた。天皇家経済は9,10世紀の交に蔵人所を中心として再編成されるが,御厨子所も,同様の職掌をもつ進物所とともにその重要な一部分をになった。その職掌はわずかに逸文として残る御厨子所例などによってうかがえるが,四衛府日次御贄(ひなみみにえ)(897制定),六ヶ国日次御贄(911制定),近江国日次乳貢進(910制定)等の制においては,蔵人所の指示を受けて奉仕したことが知られる。また,その職掌を通じて畿内を中心とする新設の広大な御厨(みくりや)や贄人たちともかかわりをもったと思われる。11世紀後半になると天皇家経済は再び変化し,中世的な供御人と御厨が成立するが,その中にあって御厨子所も,供御人支配を貫徹すべく活発な活動を行った。一例をあげれば,かつての江人の系譜を引く大江御厨や津江御厨の供御人,筑摩御厨の系譜を引く粟津橋本供御人,近江の贄人の系譜を引く菅浦供御人などはいずれも御厨子所の支配下に入った。それらをめぐる争論も少なくなく,その権益保護の姿勢をうかがいうる。天皇家-蔵人所-御厨子所は供御人たちの奉仕とひきかえに,彼らの諸役免除と活動上の諸特権を保証した。職員としては別当,預,膳部,衆,小舎人などが置かれたが,中世には別当は内蔵頭の兼帯となり,後に山科家が世襲し預を紀氏(高橋氏)が世襲した。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「御厨子所」の意味・わかりやすい解説

御厨子所
みずしどころ

令外官の一つ。内裏後涼殿 (こうろうでん) の西の廂にあって,朝夕の食事を調達し,節会などの際酒肴を司る。別当,預,所衆,膳部,滝口などの職員がおかれた。

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世界大百科事典(旧版)内の御厨子所の言及

【院司】より

… 院司の構成にはかなり変遷があるが,《西宮記》《拾芥抄》《名目抄》その他の記録により,平安・鎌倉時代の院司を概括すると,二十数種に及ぶ。それを性格・機能のうえから分類すると,(1)院中の諸事を統轄処理するもの=別当・判官代・主典代,(2)上皇の側近に侍し身辺の雑事に奉仕するもの=殿上人・蔵人・非蔵人,(3)各種の職務を分掌するもの=別納(べちのう)所・主殿(とのも)所・掃部(かもん)所・薬殿・仕所・召次所・御服所・細工所・御厨子(みずし)所・進物所・御厩・文殿(ふどの)など,(4)上皇の身辺および御所の警固に当たるもの=御随身所・武者所・北面・西面などに整理できる。まず(1)は院司の中核で,(1),もしくは(1)(2)に限って院司と称した例も多い。…

【進物所】より

…この所の職掌を規定した進物所例がごくわずかながら《西宮記》に残されている。また類似した職掌をもつ所として御厨子所(みずしどころ)がある。【玉井 力】。…

【台所】より

…摂関家の邸宅であった東三条殿では寝殿の北側に台盤所廊があり,内裏では清涼殿の西庇(にしびさし)に台盤所があった。また当時の貴族住宅では,配膳などの準備をする部屋に,清所(きよどころ),御厨子所(みずしどころ)という名称も使われた。現存する二条城二の丸殿舎には,土間や御膳所などを含む大規模な台所に隣接して,清所と呼ばれる建物があり,後者に料理の間が設けられている。…

※「御厨子所」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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