デジタル大辞泉
「心的外傷後ストレス障害」の意味・読み・例文・類語
しんてきがいしょうご‐ストレスしょうがい〔シンテキグワイシヤウゴ‐シヤウガイ〕【心的外傷後ストレス障害】
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
心的外傷後ストレス障害
しんてきがいしょうごストレスしょうがい
post traumatic stress disorder; PTSD
外傷後ストレス障害ともいう。アメリカ精神医学会の『精神疾患の診断・統計マニュアル (第3版) 』 Diagnostic and Statistical Mannual of Mental Disorders (1980) に初めてこの名が記載された。それによると,自然災害,事故,強姦や虐待などの犯罪,さらに戦争といった,人が通常経験する範囲をはるかにこえた強い心的外傷を受けたあとに発症する精神障害で,症状が1ヵ月以上続くものをいう。症状が心的外傷体験直後から1ヵ月以内にとどまる急性ストレス障害 acute stress disorder (ASD) とは区別される。第1次世界大戦後の元兵士のショック症状 (戦争神経症 ) や,ベトナム戦争後のアメリカ帰還兵の社会不適応の研究・治療から PTSDの実態がわかり,詳しい研究が始った。日本では 1995年1月の兵庫県南部地震後に自殺者が多発したことから注目されるようになった。具体的な症状としては,夢や錯覚,幻覚,フラッシュバックなどに象徴される外傷体験の繰返し,無感動,無関心といった外傷体験の記憶の抹消,さらに不眠,集中力低下などの亢進状態も認められる。治療にはカウンセリング,精神療法などが必要とされ,抗うつ剤や抗不安剤を使う場合もある。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
知恵蔵
「心的外傷後ストレス障害」の解説
心的外傷後ストレス障害
生命の危険などにさらされ、強い恐怖や無力感を体験した後で、侵入的再体験、回避や麻痺、及び覚醒亢進(自律神経系の興奮状態)が持続する障害。外傷体験は苦痛を伴い、本人の意思に反して繰り返し想起される。悪夢や、その場面が現前しているようなフラッシュバックの体験もある。関連したことを回避したり、社会生活に対する興味の減退や疎外、隔絶を感じる。また、入眠や睡眠持続が困難で、些細な刺激にも過敏になり、怒りやすくなったり、集中困難になるなどの覚醒亢進がある。戦闘、レイプ、災害、大事故、監禁など、広い範囲で外傷体験は起こるが、児童虐待のように発育途上で繰り返される体験には、複雑で深刻な影響がある。なお、体験後1カ月以内に起こる類似の反応は、急性ストレス障害という。
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報