心苦(読み)こころぐるしい

精選版 日本国語大辞典 「心苦」の意味・読み・例文・類語

こころ‐ぐるし・い【心苦】

〘形口〙 こころぐるし 〘形シク〙
① 心に苦痛を感ずる。胸が痛い。つらく切ない。思い苦し。
万葉(8C後)九・一八〇六「あしひきの荒山中に送り置きて帰らふ見れば情苦(こころぐるし)も」
平家(13C前)六「都うつりとてあさましかりし天下の乱れ、かやうの事ども御心ぐるしうおぼしめされけるより、御悩つかせ給ひて」
② 人の身の上を思って気遣わしい。気の毒である。いたわしい。いじらしい。いとしい。
※伊勢物語(10C前)九六「女をとかくいふこと月日経にけり。岩木にしあらねば、心ぐるしとや思ひけん」
※大鏡(12C前)四「さすがに、もと心ぐるしう思召しならはせ給へる御仲なればにや、いとほしげにこそ思召したりけれ」
③ 相手にすまない気持がする。気がとがめる。気づまりだ。
読本・椿説弓張月(1807‐11)後「戎衣にして御墓へ詣でん事の、いと心くるしくありつるに」
[語誌]平安時代の散文では肉親間に多く用いられ、類義語「いとほし」が恋愛の対象について多く用いられているのと対照的である。「いとほし」は人が見たら気の毒に思うさま、すなわち他者を主とした他人への思いやりを表わし、「こころぐるし」は自分から見て気の毒に思うさま、すなわち自己を主とした他人への思いやりを表わすものと考えられる。
こころぐるし‐が・る
〘他ラ四〙
こころぐるし‐げ
〘形動〙
こころぐるし‐さ
〘名〙

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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