急性硬膜下血腫(読み)キュウセイコウマクカケッシュ(英語表記)Acute subdural hematoma

デジタル大辞泉 「急性硬膜下血腫」の意味・読み・例文・類語

きゅうせい‐こうまくかけっしゅ〔キフセイカウマクカケツシユ〕【急性硬膜下血腫】

頭部外傷などにより、硬膜の間で出血が起こり、短時間血腫ができた状態。外傷による脳の損傷、または血腫の増大に伴って脳が圧迫されることにより、意識障害などの症状が現れる。脳動脈瘤破裂など外傷以外の原因で起こる場合もある。→硬膜下血腫慢性硬膜下血腫急性硬膜外血腫

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六訂版 家庭医学大全科 「急性硬膜下血腫」の解説

急性硬膜下血腫
きゅうせいこうまくかけっしゅ
Acute subdural hematoma
(外傷)

どんな外傷か

 頭蓋骨内側で脳を包んでいる硬膜と、脳の間に出血がたまって血腫になったものです(コラム頭部の解剖図)。

原因は何か

 脳組織の挫滅(ざめつ)脳挫傷(のうざしょう))があり、そこからの出血が脳の表面(脳表)と硬膜の間にたまり、硬膜下血腫になります。

 まれに硬膜と脳表とを結ぶ静脈((きょう)静脈)が切れて出血することがあります。この場合は、たとえ頭部に打撲(だぼく)がなくても、脳が強く揺れるような外力(とくに回転性の外力)により出血します。

症状の現れ方

 血腫による圧迫と脳挫傷のため、頭蓋骨の内側の圧が高まり(頭蓋内圧亢進(ずがいないあつこうしん))、激しい頭痛、嘔吐、意識障害などが認められます。さらに、血腫の圧迫が脳ヘルニアの状態にまで進行すると、深部にある生命維持中枢(脳幹(のうかん))が侵され(呼吸障害など)、最終的には死に至ります。

 脳挫傷局所の症状として、半身麻痺片麻痺(かたまひ))、半身の感覚障害、言語障害、けいれん発作などが現れることもあります。受傷直後に血腫ができて症状が現れることがほとんどですが、数時間たってから意識がなくなることもあり、注意が必要です。最近の統計では、重症の急性硬膜下血腫の13%で意識障害が遅れて現れています。意識障害出現までの時間はその81%が3時間以内でした。

 (きょう)静脈が出血源の場合は乳幼児に多いとされ、典型的な例では、乳児が後ろに転んで畳に後頭部を打撲し、数分間泣いたのち嘔吐やけいれん発作を起こし、意識がなくなるということがあります。

検査と診断

 血腫は頭部CTで白く映ります(高吸収域)。血腫は脳の表面に広がるため、三日月型になります。

治療の方法

 血腫の大きさと症状の程度によって、緊急に開頭血腫除去術(かいとうけっしゅじょきょじゅつ)が行われます。日本のガイドラインでは、血腫の厚さが1㎝以上を手術の目安にしています。

 血腫が少量の場合は手術の効果が低いため、重症でも薬物療法が選択されることが多く、頭蓋内圧亢進に対する脳圧降下薬(グリセオールやマンニトール)の点滴注射が行われます。頭蓋内圧亢進に対する特殊な治療法としてバルビツレート療法や低体温療法がありますが、副作用も大きいため適応は慎重に判断されます。

 脳ヘルニアが進行し、脳幹の機能が失われた場合(たとえば呼吸停止)は、手術での危険が高く、開頭手術を行えないこともあります。重症例では、局所麻酔で頭蓋骨に小さな(あな)をあけて血腫を抜く穿頭血腫(せんとうけっしゅ)ドレナージ術が行われることもあります。

 予後は、一般的に入院時の意識障害の程度に比例し、昏睡(こんすい)状態の重症急性硬膜下血腫の死亡率は70%、社会復帰は15%と報告されています。

並木 淳

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家庭医学館 「急性硬膜下血腫」の解説

きゅうせいこうまくかけっしゅ【急性硬膜下血腫 Acute Subdural Hematoma】

[どんな病気か]
 脳のいちばん外側を包む硬膜(こうまく)とその内側のくも膜の間の血管が切れて出血し、血のかたまり(血腫(けっしゅ))ができたのが硬膜下血腫(こうまくかけっしゅ)です。
[治療]
 血腫が小さければ手術をせず、症状に応じた保存的な治療をします。血腫が大きければ手術をして血腫を取り除きますが、脳挫傷(のうざしょう)(「脳挫傷」)にともなって、あるいは太い静脈が切れておこることが多いため、予後がよくありません。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「急性硬膜下血腫」の意味・わかりやすい解説

急性硬膜下血腫
きゅうせいこうまくかけっしゅ

硬膜下血腫

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