恨・怨・憾(読み)うらみ

精選版 日本国語大辞典 「恨・怨・憾」の意味・読み・例文・類語

うらみ【恨・怨・憾】

〘名〙 (動詞「うらむ(恨)」の連用形の名詞化)
① 自分に対してひどいことをした人を憎むこと。また、自分の境遇などに対する憤り、反発する気持
古事記(712)下「父王の怨(うらみ)を其の霊に報いむと欲(おも)ほすは」
物事状態がよくないことを残念だと思う気持。不平不満。また、ぐち。不平の訴え。
万葉(8C後)一七・四〇一五・左注「須臾覚寤有於懐、因作恨之歌
③ 好ましくない状態に置かれて感じる悲しみ。嘆き。
海道記(1223頃)萱津より矢矧「楊妓が路に泣て騒人の恨をいだきけんも」
④ (③の意から、詩的表現として) 悲しみをさそうような虫の声。
平家(13C前)灌頂「鹿の音かすかにおとづれて、虫の恨もたえだえなり」
⑤ 仕返しをすること。復讐(ふくしゅう)
※謡曲・舟弁慶(1516頃)「西国にて滅びし平家の一門〈略〉かかる時節を窺ひて、恨みをなすも理(ことわり)なり」
⑥ (②の意から) 好ましくない物事の状態。気に入らない事態。不満な点。
洒落本・仕懸文庫(1791)四「コレてめへ指の輪はうらみだぜ」

うら・む【恨・怨・憾】

[1] 〘他マ上二〙
① 自分に対してひどいことをした人、または、自分の思い通りにならない物事やその状態などに不満を持ち、悲しく思う。また、残念に思い反発する気持を持つ。うらぶ。うらみる。
※万葉(8C後)一一・二六二九「あはずとも吾は怨(うらみ)じこの枕吾と思ひて枕(ま)きてさ寝ませ」
② 憤りの気持を口に出す。当の加害者に不満を訴える。
古今(905‐914)春下・七六「花ちらす風のやどりは誰かしる我にをしへよ行きてうらみむ〈素性〉」
③ (②の意から、詩的表現として) 秋の虫がさびしそうに鳴く。また、悲しみを誘うように風が音を立てる。
※相模集(1061頃か)「あか月のつゆは涙もとどまらでうらむる風のこゑぞのこれる」
④ 仕返しをする。(斬りつけて)恨みを晴らす。
※平家(13C前)三「入道相国朝家を恨み奉るべき事必定と聞こえしかば」
[2] 〘他マ五(四)〙 ((一)から転じて、近世以後に使われるようになった) (一)に同じ。
※浮世草子・好色二代男(1684)七「此男久米之助親を深く恨む事ありて」
[語誌]中世までは上二段に活用したが、近世以後は四段化した。語源は「うら(心)み(見)る」で、もともとは心中の持続的な状態であるが、後にはそれを外に表わす動作をいうようにもなった。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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