惚・呆(読み)ほく

精選版 日本国語大辞典 「惚・呆」の意味・読み・例文・類語

ほ・く【惚・呆】

[1] 〘自カ四〙
知覚が鈍くなる。ぼんやりする。ほうける。ぼける。
※平中(965頃)一八「この文伝ふる人は、もとより、少しほきたるやうに覚えければ」
② 色が薄れてはっきりしなくなる。色があせる。
万両(1931)〈阿波野青畝〉「夕づつの光りぬ呆(ホ)きぬ虎落笛」
[2] 〘自カ下二〙 ⇒ほける(惚)
[語誌](1)中世以後、老化などによる思考力の低下物忘れなどマイナスイメージのある語義を、「ほく(下二段活用)」の語頭を濁音化させた「ぼく」「ぼける」が担うようになる。
(2)類義語「惚(ほ)る(下二段活用)」は一つのことに夢中になる意を強め、特に異性に対して夢中になることを表わすようになった。

ほ・ける【惚・呆】

〘自カ下一〙 ほ・く 〘自カ下二〙 (「ほげる」とも)
① 知覚がにぶくなる。ぼんやりする。ほうける。ぼける。
落窪(10C後)三「かの中納言はほけて、妻にのみ従ひて」
② 夢中になる。我を忘れる。惚れこむ。深く思いをかける。
浮世草子傾城禁短気(1711)二「内の女房は片足みじかいげなが、五十両の敷金にほげて持て」
③ 古くなって色があせたり、けば立ったりしてくる。
※俳諧・文政句帖‐六年(1823)一〇月「城内の菜畠ほける十夜哉」
相場が立会前の人気に反して安くなる。また、やや上げ相場が下落気味になる。

ぼけ【惚・呆】

〘名〙 (動詞「ぼける(惚)」の連用形名詞化)
① (「ほけ」とも) ぼけること。また、ぼけた人。阿呆(あほう)。ばか。〔俚言集覧(1797頃)〕
軽口漫才で滑稽な役を演ずる者。
※苦笑風呂(1948)〈古川緑波〉ロッパ放談「所謂ボケといふ役どころで、曾我廼家蝶六といふ名優の行き方に似たものである」
③ 取引相場で、立会前の人気に比べて、意外に安いこと、また、予期に反する相場をいう。〔取引所用語字彙(1917)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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