愛想・愛相(読み)あいそ

精選版 日本国語大辞典 「愛想・愛相」の意味・読み・例文・類語

あい‐そ【愛想・愛相】

〘名〙 (「あいそう」を短く呼んだものか)
① 人当たりのよいさまをいう。
(イ) 他人によい感じを与えるような態度。かわいらしい顔つき、やさしいもの言い、応対の仕方など。
※寛永刊本蒙求抄(1529頃)三「毅(き)あいそもなう、しやれられぬ、はつたとした者ぞ」
※浄瑠璃・義経千本桜(1747)三「此内は鮓商売、宿屋ではござらぬと、あいそのないがあいそと成り」
(ロ) 他人の機嫌をとるような、ちょっとした態度やもの言い。おせじ。あいきょう
※油地獄(1891)〈斎藤緑雨〉八「夢に迄見た小歌に出会って、欠(かけ)半分の愛想(アイソ)も出ずに」
② 他人に対する親しみの気持。多く、「あいそが尽きる」「あいそを尽かす」の表現をとる。
③ 他に対する茶菓などのもてなし。また、使いの者への心付けなど、気をきかして与える金品。「おあいそ」の形で用いることが多い。
※歌舞伎・大雑書伊勢白粉(1696)一「是はよい足駄ぢゃ〈略〉宿の娘がほしがる所で、愛想(あいそ)にする」
④ (「あいそづかし」の略という) 飲食店などで客に請求する勘定。また、その勘定書。もと関西の語で、ふつう「おあいそ」の形で用いる。
※鱧の皮(1914)〈上司小剣〉一「二階の客にも十二組までお愛そ(勘定の事)も済ましたので」
[語誌]仮名で表記されるとき、「あいそ」「あいそう」「あいさう」と揺れがある。漢字表記でも、「あい」に「愛・哀」、「そう(さう)」には「相・想・崇・増・荘」といったものがあって一定しない。キリシタン資料でも開合混乱があり、アイサウ、アイソウの両表記が見られる。挙例の「蒙求抄」のように抄物資料で仮名書きされていることなどから、本来この語は和語「あいそ」であって、後に長呼「あいそう」から、漢語と意識されるようになったものかもしれない。

あい‐そう ‥サウ【愛想・愛相】

〘名〙
※虎明本狂言・花子(室町末‐近世初)「ならの春日のさがりまつの下で、みたるめもとは、しげんげしげんげ、あひさうしげんげの、めもとやなふ」
洒落本遊子方言(1770)発端「ここの女房は、あまり愛想(アイソウ)がよくないじゃござりませぬか」
花間鶯(1887‐88)〈末広鉄腸〉中「何も御愛想(アイサウ)もいたしませんに」
④ =あいそ(愛想)④〔模範新語通語大辞典(1919)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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