打壊・打毀(読み)ぶちこわす

精選版 日本国語大辞典 「打壊・打毀」の意味・読み・例文・類語

ぶち‐こわ・す ‥こはす【打壊・打毀】

〘他サ五(四)〙
① 打ったりたたいたりして物を砕いたり、破ったりする。たたきこわす。うちこわす。
談義本・遊婦多数寄(1771)二「大槌(かけや)の鋸など持たせぶちこはすとゆすりかけ
② (「ぶち」は接頭語) でき上がり、整っている状態調子計画などをだめにする。だいなしにする。うちこわす。
※水彩画家(1904)〈島崎藤村〉一一「家庭破壊(ブチコハ)すのが主だ」
③ (「ぶち」は接頭語) からだをいためる。健康を害する。
西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉初「長どうりうですっぱり腹をぶちこわしたから」

うち‐こわ・す ‥こはす【打壊・打毀】

〘他サ五(四)〙
① 力を加えて物を砕いたり、破ったりしてだめにする。物をたたき壊す。破壊する。
随筆一話一言(1779‐1820頃)七「天明七年丁未五月十日より十二日まで、大坂米問屋二百軒程打こはす」
※西洋道中膝栗毛(1874‐76)〈総生寛〉一三「丼(どんぶり)を二つうち毀(コハ)したのまで知って居るが」
② (「うち」は接頭語) できあがっている状態の物事や、まとまりかけていた物事をだめにする。
※うもれ木(1892)〈樋口一葉〉七「何ごとの璺(ひび)いりたるか、談合する友は少なく、打(ウチ)こわす仇は多き世の中」

うち‐こわし ‥こはし【打壊・打毀】

〘名〙
① うちこわすこと。
※二人女房(1891‐92)〈尾崎紅葉〉中「いろいろ手を尽して此隔(へだて)打壊(ウチコハ)しに懸れど」
② 江戸中期以後、凶作などで米価が騰貴し生活苦に迫られた町方の貧民大衆が、米屋質屋、酒屋などの富商家宅を破壊し、米銀を奪い、物資廉売を要求するなどしたこと。
※随筆・一話一言(1779‐1820頃)補遺「天明打こはし一件〈略〉上方辺も打こはしのはやりける事、右同様なりと噂しけるも」

ぶち‐こわし ‥こはし【打壊・打毀】

〘名〙
① 打ったりたたいたりして物をこわすこと。
※玄武朱雀(1898)〈泉鏡花〉八「木遣で打壊(ブチコハシ)をやらうなんて、小気味の可い、豪勢なことあ」
② でき上がったり、整ったりしている状態などをだめにすること。
※別れた妻に送る手紙(1910)〈近松秋江〉「あの手紙を書いた長田の心持は、忌々しさに、打壊(ブチコハ)しをやるに違ひない」

ぶっ‐こわし ‥こはし【打壊・打毀】

〘名〙
① 「ぶちこわし(打壊)」の変化した語。
※弘法大師について(1934)〈菊池寛〉「即身成仏の場面などは解釈の仕様がない。下手に解釈すれば、ぶっこはしである」
② 打壊(うちこわし)②を俗にいう。
※里芋の芽と不動の目(1910)〈森鴎外〉「打毀(ブッコハシ)といふ奴が来やがった」

ぶち‐こわ・れる ‥こはれる【打壊・打毀】

〘自ラ下一〙 (「ぶち」は接頭語) 物がめちゃめちゃにこわれる。すっかりこわれる。だいなしになる。
※当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉九「社会はたちまち滅裂(ブチコワ)れて、世は蒙昧のむかしに退歩らん」

ぶっ‐こわ・す ‥こはす【打壊・打毀】

〘他サ五(四)〙 「ぶちこわす(打壊)」の変化した語。
※談義本・根無草(1763‐69)後「堺町をぶっこはし、玉をこっちへ引さらはんと」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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