打掛・打懸(読み)うちかける

精選版 日本国語大辞典 「打掛・打懸」の意味・読み・例文・類語

うち‐か・ける【打掛・打懸】

〘他カ下一〙 うちか・く 〘他カ下二〙
[一] (「うち」は接頭語)
① (衣類などを)ひょいとひっかける。ひょいと乗せる。
万葉(8C後)五・八九二「綿もなき 布肩衣(ぬのかたぎぬ)の 海松(みる)のごと わわけさがれる 襤褸(かかふ)のみ 肩に打懸(うちかけ)
② (手や体を)ひょいともたせかける。(腰を)下ろす。
※万葉(8C後)五・八九四「大御神たち 船の舳(へ)に 御手打掛(うちかけ)墨縄を 延(は)へたる如く」
浄瑠璃嫗山姥(1712頃)五「とある木の根に腰うちかけ」
[二] (「うち」は「打つ」の意)
① 打ち下ろしてひっかける。
平家(13C前)一一「二三度までうちかけけるを」
② (相手を目がけて武器を)打ち下ろす。
※幸若・一満箱王(室町末‐近世初)「いづくに刀をうちかけて」
③ (相手に鉄砲や石などを)飛ばす。発射する。
日葡辞書(1603‐04)「ツブテヲ vchicaquru(ウチカクル)
④ 浴びせかける。ふりかける。
※後撰(951‐953頃)雑一・一〇九六「住吉の岸ともいはじおきつ浪猶うちかけようらはなくとも〈藤原元輔〉」

うち‐かか・る【打掛・打懸】

〘自ラ五(四)〙
① 武器などで相手に攻めかかる。攻撃する。
太平記(14C後)一四「大嶋、額田、籠沢、岩松が勢に打懸る」
液体が飛び散って付く。
狂歌吾吟我集(1649)冬「打かかる浪うけながし払ふにぞ水もたまらぬをしのつるぎ羽」
③ (「うち」は接頭語) 近寄る。近づく。
今昔(1120頃か)二九「此の死(しにし)人に只打(うち)に打懸りて」
④ (「うち」は接頭語) 支えてもらうために体を寄せかける。もたれかかる。また、人に頼る。寄りかかる。〔日葡辞書(1603‐04)〕
※仮名草子・恨の介(1609‐17頃)下「雪の前殿うちかかり、自害してこそ死し給ふ」
⑤ (「うち」は接頭語) 他のものにかぶさる。物の表面に覆いかぶさる。
※今昔(1120頃か)二〇「乞起走て、頭に打懸たる衣を取り」
⑥ (「うち」は接頭語) 物事にたずさわる。従事する。
※浮世草子・世間手代気質(1730)一「商売ばかりに打かかりて」
⑦ (「うち」は接頭語) 物事を始める。とりかかる。
※浄瑠璃・新版歌祭文お染久松)(1780)野崎村我等は又天窓(あたま)を丸め参り下向に打かからふと」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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