折返(読み)おりかえす

精選版 日本国語大辞典 「折返」の意味・読み・例文・類語

おり‐かえ・す をりかへす【折返】

[1] 〘他サ五(四)〙
① 布や紙などを、裏側が部分的に見えるように折る。また、紙などを、現在の折り方と反対側に折る。
万葉(8C後)一七・三九七三「春の野に すみれを摘むと 白たへの 袖乎利可敝之(ヲリカヘシ)(くれなゐ)の 赤裳裾引き」
詩歌管弦の曲を、二度繰り返して吟じ、また、奏する。転じて、物事を繰り返して行なう。
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「遺言の手を、おりかへし弾く」
③ もう一度、もとの状態にもどす。
※いたづら小僧日記(1909)〈佐々木邦訳〉「水で冷えたのだから折返(ヲリカヘ)して温めさへすれば直ると思ってゐるのだらう」
[2] 〘自サ五〙
① ある所まで行って、来た方向にひき返す。
俳諧続猿蓑(1698)春「燕や田をおりかへす馬のあと〈野童〉」
② 手紙や話などのやりとりを、あまり間をおかないでする。すぐ返事をする。
※思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉八「早速母に上京を促した。折かへして来た母の返事には」

おり‐かえし をりかへし【折返】

〘名〙
和服や洋服などで、折って二重にした部分。
※評判記・色道大鏡(1678)二「帷子(かたひら)のおりかへし、袖すそのおりかへし、よからぬ業なり」
② 詩や歌で、各節の末尾に同じ語句を繰り返して用いること。また、その語句。リフレイン
※放浪時代(1928)〈龍胆寺雄〉一「僕も最初の抑揚の浅いあの折返しの部分しか覚えて居ないので〈略〉そこだけしか弾けないのだが」
③ ある所まで行って、来た方向にひき返すこと。また、その地点
※浮世草子・風流曲三味線(1706)六「ちと宿に叶はぬ用事失念して来たれば、折返しに急に帰りて来るべし」
④ (副詞的にも用いる) 手紙などで、すぐ返事をするさま。
湖畔手記(1924)〈葛西善蔵〉「それが折返しの今日の絶望的な細君の葉書だった」
⑤ 平面上の図形をその平面上の直線に関して線対称移動すること。

おれ‐かえ・る をれかへる【折返】

〘自ラ四〙
① 草などが根元の方にすっかり折れ曲がる。
源氏(1001‐14頃)野分「おれかへり、露もとまるまじく吹きちらすを、すこしはしちかくて、見給ふ」
② 舞を舞うときなどに、からだや袖がうまくまがったり、ひるがえったりする。
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「仲澄(なかずみ)の侍従、落蹲(らくそん)まひて、御階(はし)のもとに舞ひいでて、おれかへり舞ふ」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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