抜出(読み)ぬきいず

精選版 日本国語大辞典 「抜出」の意味・読み・例文・類語

ぬき‐い・ず ‥いづ【抜出】

[1] 〘他ダ下二〙
① 引き抜いて取り出す。ぬきず。ぬきだす。ぬきいだす。
※書紀(720)継体三年二月(前田本訓)「百済の百姓の浮逃(にけ)て貫(へ)(た)えたる三四世(みつきよつきなりたる)者を括出(ヌキい)でて並に百済に遷して貫(へ)に附く」
※万葉(8C後)一三・三二四〇「劔刀 鞘ゆ抜出(ぬきいで)て」
② 選び出す。選抜する。
江家次第(1111頃)八「昨日相撲人中、抜出之相撲也」
※増鏡(1368‐76頃)一「すぐれたる限りぬきいで給めりしかば」
[2] 〘自ダ下二〙 他よりすぐれて上に出る。ひいでる。ぬきでる。ぬきんでる。
愚管抄(1220)三「房前・宇合の子たちにて永手・百川とてぬきいでたる人々有て」

ぬけ‐い・ず ‥いづ【抜出】

〘自ダ下二〙
※観智院本三宝絵(984)上「若し其の孝の心天に被知たらば子の箭自ら抽け出て其の毒早く消え失て去れる」
曾我物語(南北朝頃)八「この太刀、おのれとぬけ出て、〈略〉大蛇の尾頭九尋ありけるを、四つにこそはきりたりける」
太平記(14C後)二「夜は忍やかにぬけ出て」
※書紀(720)皇極三年三月(岩崎本訓)「紫の菌(たけ)雪より挺(ヌケイテ)て生いたるを看る」
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「何ごとにもすぐれ、ただ今世にたぐひなくぬけいでたる人なれば」

ぬき‐だ・す【抜出】

〘他サ五(四)〙
① ひき抜いて出す。取り出す。
※漢書列伝竺桃抄(1458‐60)酈陸朱劉叔孫第十三「唐土の倉は上すばりに下ひろなぞ。入れかさね入れかさねをいて、なんとしてやらう下からぬきたしぬきたしとるやうにするぞ」
② 多くの中から選び出す。より出す。
人情本・英対暖語(1838)三「種々の書物の中から抜出(ヌキダ)して所為(わざ)と文章を俗に直して」
③ 外に表わし出す。他より上に出す。つき出す。
浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉一「黯黒(くらやみ)の中からヌッと半身を捉出(ヌキダ)して」
④ その部分だけをとり出して目立たせる。
※普賢(1936)〈石川淳〉五「同じ色の菖蒲の花を抜き出した小浜縮緬(ちりめん)の単衣」

ぬけ‐だ・す【抜出】

〘自サ五(四)〙
① 中から外に出る。
(イ) 仕切られた場所から外へ出る。また、こっそりと出る。
※当世少年気質(1892)〈巖谷小波〉五「ソッと抜(ヌ)け出(ダ)して里へ遊びに行く」
(ロ) 競っているものの中から抜けて先に出る。
競馬(1946)〈織田作之助〉「殆ど諦めかけてゐたやうな馬が、最後の直線コースにかかると急に馬ごみの中から抜けだして」
(ハ) ある状態から離れ出る。
安愚楽鍋(1871‐72)〈仮名垣魯文〉二「ほら貝を天下泰平に成たから山へ埋てしまったのがだんだんそだってこんどぬけ出(ダ)して」
② 抜け始める。「毛がぬけだす」

ぬけ‐・でる【抜出】

〘自ダ下一〙 ぬけ・づ 〘自ダ下二〙
① 中から抜けて出る。外へ出る。ぬけいず。
一夜(1905)〈夏目漱石〉「画から女が抜け出るより、あなたが画になる方が、やさしう御座んしょ」
② のがれ出る。こっそりと出る。また、ある情況や考えから離れ出る。ぬけいず。
史記抄(1477)一二「きたなげな中をば我とぬけてたぞ」
田舎教師(1909)〈田山花袋〉六「ぢゃ、何んな境遇からでも、其人の考一つで抜け出ることが出来ると謂ふんだねえ」
③ 高く突き出る。突出する。ぬけいず。
④ 他を抜いてすぐれる。群を抜く。ぬきんでる。ぬけいず。〔観智院本名義抄(1241)〕
※両足院本山谷抄(1500頃)四「賢人の中でづんとぬけでた人と云心ぞ」

ぬき‐で【抜出】

〘名〙
① 平安時代、相撲(すまい)の節(せち)の翌日、前日特に成績のよかった者を選抜して、さらに取組みをさせたこと。また、それに選ばれた者。前日勝負の定まらなかった者をあらためて試合させたこともある。抜手。抜取り。
※御堂関白記‐寛弘七年(1010)七月二八日「抜出二番」
② 「ぬきでわた(抜出綿)」の略。〔日葡辞書(1603‐04)〕
※俳諧・鷹筑波(1638)二「綿に似てつめたき雪はぬきて哉〈尹平〉」

ぬき‐・でる【抜出】

〘自ダ下一〙 ぬき・づ 〘自ダ下二〙
① あるものの中から出る。現われ出る。きわだって出ている。
※草枕(1906)〈夏目漱石〉九「くすんだ半襟の中から、恰好のいい頸の色が、あざやかに、抽き出て居る」
② すぐれる。ひいでる。ぬきんでる。
※大慈恩寺三蔵法師伝院政期点(1080‐1110頃)八「法流東に旋りて陳荄を洽(うる)ほして、秀に挺(ヌキテ)たり」

ぬき‐いだ・す【抜出】

〘他サ四〙
① ひきぬいてとりだす。抜き取る。ぬきだす。
※南海寄帰内法伝平安後期点(1050頃)二「傍に抽(ヌキイタシ)て左右を牽(ひ)き」
※虎明本狂言・二千石(室町末‐近世初)「鎧の引合せより扇ぬき出し」
② 多くの中から選び出す。よりぬく。選抜する。
③ 挙用する。抜擢する。

ぬけ‐いだ・す【抜出】

〘自サ四〙
※俳諧・大坂独吟集(1675)上「紙一牧に名所旧跡 扇まつ歌人居ながら抜出し〈意楽〉」
② 他にぬきんでてすぐれている。
※四河入海(17C前)一一「凡物に鋒字をつけて云は、其々の芸に抜出した方に云ぞ」

ばっ‐しゅつ【抜出】

〘名〙
① ひき抜いて出すこと。
※妙一本仮名書き法華経(鎌倉中)四「衆生の処処の貪着お抜出(ハッシュツ)(〈注〉ヌキイタシ)したまふ」
② 抜け出ていること。すぐれていること。〔文明本節用集(室町中)〕 〔後漢書‐荀彧伝〕

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デジタル大辞泉 「抜出」の意味・読み・例文・類語

ぬき‐で【抜(き)出】

平安時代、相撲すまいせちの翌日、前日特に成績のよかった者を選抜してさらに取組をさせたこと。また、それに選ばれた者。抜き取り。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

普及版 字通 「抜出」の読み・字形・画数・意味

【抜出】ばつしゆつ

卓出する。

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