押回・押廻(読み)おしまわし

精選版 日本国語大辞典 「押回・押廻」の意味・読み・例文・類語

おし‐まわし ‥まはし【押回・押廻】

〘名〙
世間の事をあれこれ処理すること。「おしまわしが利(き)く」
和船の船尾上廻り構造の形式で、舷側の垣立(かきだつ)を艫(とも)やぐらの末端まで連続してつくるもの。中世末期から近世初期の大型の軍船や荷船に採用され、軍船では安宅(あたけ)型の特徴の一つとされている。押し廻し造り。
※能島家伝書(17C初か)兵船造様之事「大将乗船は〈略〉惣矢倉左右胴壁作り、ねうし筥置・とも押廻しの大舟也」
③ 近世和船の船型名称。通常の弁才船と同じ系統の大型荷船だが、艫の垣立を②の構造にするものを、弁才船と区別するために特にいう。近世前期、瀬戸内、紀州地方で主用されたが、後期にはほとんどなくなった。〔和漢船用集(1766)〕

おし‐まわ・す ‥まはす【押回・押廻】

〘他サ四〙 (「おし」は接頭語)
① ぐるりとまわす。物を押してまわしたり、物を順にまわしたりする。また、まわりを取り巻いたり、回ったりする。
愚管抄(1220)四「御方の勢はかりなければ、をしまはして火かけてければ」
全体に及ぶようにする。
四河入海(17C前)八「ちっとなる小石の詩を作るとて、唐土一天下ををしまわして先づ云か」
③ 世間の事にあれこれ処して行く。
安愚楽鍋(1871‐72)〈仮名垣魯文〉二「チトふけたれどすねんのこうにておしまはす大ばくれん」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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