持国天(読み)じこくてん

精選版 日本国語大辞典 「持国天」の意味・読み・例文・類語

じこく‐てん ヂコク‥【持国天】

(Dhṛtarāṣṭra訳語) 仏語提頭頼吒四天王の一つ。須彌山の東面中腹に住し、東方を守護する主神。帝釈天に仕える。密教では胎蔵界曼荼羅外金剛部院の西に配置する。赤身で、右手宝珠左手に刀などを持ち、古くから彫刻絵画などの作が残る。持国天王。持国。
今昔(1120頃か)五「弟の明尤は今今の持国天、此也」 〔妙吉祥菩薩所問大乗法螺経〕

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デジタル大辞泉 「持国天」の意味・読み・例文・類語

じこく‐てん〔ヂコク‐〕【持国天】

《〈梵〉Dhṛtarāṣṭra仏法守護神四天王の一。東方を守る。天衣を着て、右手に宝珠、左手に刀を持つ。持国天王。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「持国天」の意味・わかりやすい解説

持国天
じこくてん

仏教の守護神。サンスクリット語ドゥリターシュトゥラ・デーバDhtarāra-devaの訳で、治国(じこく)天、東方天、持国天王とも称する。須弥山(しゅみせん)の東中腹に住し、東方の世界を守護する神であり、とくに仏法を守る。その形像に関しては一定しないが、普通、武将形で、青色の身に甲冑(かっちゅう)と種々の天衣(てんね)を着け、左手は腕を伸ばして刀を執(と)り、右手は曲げて宝珠(ほうしゅ)を持つものもある。増長(ぞうちょう)天、広目(こうもく)天、多聞(たもん)天とともに四天王の一つに数えられる。

[江口正尊]

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百科事典マイペディア 「持国天」の意味・わかりやすい解説

持国天【じこくてん】

仏教守護の天部の神。四天王の一人で,須弥山(しゅみせん)中腹の東部に住し,東方世界を守護する。金翅鳥(こんじちょう)などを家来とし,悪魔などをくだす。像は神王形で左手に刀か槊(さく)を持つ。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「持国天」の意味・わかりやすい解説

持国天
じこくてん
Dhṛtarāṣṭra

仏教守護の天部の神で四天王の一つ。須弥山 (しゅみせん) の第4層に住し,東方を守護する善神。像は神王形で左手に刀を持ち足下に鬼を踏むのが通例。インド神話では東方の守護神はインドラで,仏教の伝えるものとは異なる。法隆寺,東大寺,興福寺などに像がある。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「持国天」の解説

持国天 じこくてん

仏教の守護神。
帝釈天(たいしゃくてん)につかえる四天王の一神。須弥山(しゅみせん)の東中腹にすみ,東方の世界を守護する。おおくは手に宝珠(ほうしゅ)や刀をもつ武神の姿であらわされる。治国天,東方天,持国天王とも。

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世界大百科事典(旧版)内の持国天の言及

【四天王】より

…四大天王,四王,護世四王ともいう。東方に持国天(提頭頼吒(だいずらた)の訳),南方に増長天(毘楼勒叉(びるろくしや)),西方に広目天(毘楼博叉(びるばくしや)),北方に多聞天(毘沙門)が位置する。《増一阿含経(ぞういちあごんきよう)》や《阿育王経(あいくおうきよう)》には,四天王が釈尊のもとに現れて帰依したことや,釈尊の涅槃(ねはん)の後に仏法を守護することを釈尊から託されたことを記し,《金光明最勝王経》には,四天王が釈尊に対し本経を信奉する人々とその国家を守護することを誓ったことが説かれている。…

※「持国天」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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