指揮棒(読み)しきぼう(英語表記)bâton de commandement[フランス]

精選版 日本国語大辞典 「指揮棒」の意味・読み・例文・類語

しき‐ぼう【指揮棒】

〘名〙
音楽で、指揮者楽曲リズム拍子テンポ強弱表情などを演奏者に知らせるために指揮台で振る棒。タクトバトン
※欧米印象記(1910)〈中村春雨〉プリンストン雑記「指揮者の振る指揮棒(シキバウ)の一点の電光は」
② 一般に、集団の指揮者が指図をするために持つ棒。
※輝ける闇(1968)〈開高健〉「将校が指揮棒をふりおろした。ふたたび機関銃が唸りはじめた」

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デジタル大辞泉 「指揮棒」の意味・読み・例文・類語

しき‐ぼう【指揮棒】

音楽で、指揮者が手に持って振る細い棒。タクト。

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改訂新版 世界大百科事典 「指揮棒」の意味・わかりやすい解説

指揮棒 (しきぼう)
bâton de commandement[フランス]

旧石器時代の骨角器。有孔棒bâton percéとも呼ばれている。鹿角製で,一端の,ちょうど叉角の第1枝の中央部に,1個ないし複数の孔がうがたれている。呪術的な指揮杖とも考えられているが,類似したものはエスキモーにも認められる。それは,骨製の棒に熱を加えて真直ぐにするための〈てこ〉として使用される。指揮棒の孔の周辺には使用痕が残されているので,槍や鏃の柄などを真直ぐにするために利用された可能性もある。また投槍器であると考えている研究者もいる。指揮棒の軸部には,写実的な動物の絵や幾何学文様などの線刻が施されるのが通常である。ヨーロッパ後期旧石器時代のオーリニャック文化期から後期マドレーヌ文化期にかけて,その出土例が報告されている。また,シベリアの後期旧石器時代遺跡アフォントバ山Ⅱや中国黒竜江省のジャライ・ノール遺跡からも類似のものが発見されている。
執筆者:

指揮棒 (しきぼう)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「指揮棒」の意味・わかりやすい解説

指揮棒
しきぼう
bâton de commendment フランス語

ヨーロッパ、後期旧石器時代特有の角(つの)製品。古くから、呪術(じゅじゅつ)的な儀礼の際に用いられる指揮棒であると解釈され、一般にこう呼び習わされている。

 トナカイの角を材料にしてつくられた棒に、1か所ないし複数の孔(あな)を穿(うが)ったもので、一端に、枝角の叉状(さじょう)部を留めるように切断して、ここに孔を開ける。このために、多くの場合Y字状の形状を呈する。シカなどの動物や幾何学的な文様によって飾られていることがある。長さ20~30センチメートルほどのものが多い。

 一方、エスキモーは、同様の道具を、棒状の骨製品のゆがみを矯正するために用いていた。これにヒントを得て、投げ槍(やり)の柄(え)などをまっすぐに仕上げるための道具であると解釈する立場も有力である。その証拠として、孔の周縁部に、加工作業の際に生じた摩耗痕(こん)がしばしば認められるという。この場合は角製有孔棒とよばれることが多い。

[鈴木忠司]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「指揮棒」の意味・わかりやすい解説

指揮棒
しきぼう
baton

(1) 一般に集団を指揮するときに使用される棒。 (2) 音楽指揮者が合唱団や管弦楽団を指揮するときに用いる棒。多くは細い木でつくられ,長さ 40~60cm。 (3) ヨーロッパの後期旧石器時代の遺跡から発見される棒状の骨角器をいう。一端がふくらみ,そこに孔があけてある。なかには動物などの浮彫があるものもある。形態上からの名称であって,実際の用途は不明。日本でも縄文時代の遺跡からこれに似たものが発見されている。

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