振鷺亭(読み)しんろてい

精選版 日本国語大辞典 「振鷺亭」の意味・読み・例文・類語

しんろてい【振鷺亭】

洒落本読本、草双紙作者。本名猪狩貞居。二流作者の域を出ないが、戯作各方面に筆をふるい、洒落本「自惚鏡」、読本「いろは酔故伝」が代表作。なお、人情本作者為永春水が二世振鷺亭を名乗った。文政二年(一八一九)没。

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改訂新版 世界大百科事典 「振鷺亭」の意味・わかりやすい解説

振鷺亭 (しんろてい)
生没年:?-1819(文政2)

江戸後期の戯作者。本名猪狩貞居(いかりていきよ)。通称与兵衛,また彦左衛門。魚米庵,寝言夢輔(ねごとゆめすけ),金竜山下隠士,金竜山人,関東米(かんとうべい)などの別号あり。日本橋本船町の家主で浜町に住した。絵を鳥居清長に学んだというが,戯作は1789年(寛政1)刊の洒落本《自惚鏡(うぬぼれかがみ)》を処女作として翌90年刊《格子戯語(こうしけご)》,寛政改革後の寛政年間(1789-1801)に刊行した《玉の牒(ぎよくのちよう)》《客衆一華表(きやくしゆいちのとりい)》などの洒落本に佳作が多く,読本に《いろは酔故伝》(1794),《千代曩媛七変化物語(ちよのひめしちへんげものがたり)》(1808),《阥阦妹背山(おんよういもせやま)》(1810)などがあり,ほかに滑稽本,合巻の作もある。1807年(文化4)に,家主の職を親族らから追われたらしく,浅草寺内に移り,晩年は落魄して川崎に移り,手習師匠を業としたという。為永春水が一時期2世振鷺亭を名のっている。
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朝日日本歴史人物事典 「振鷺亭」の解説

振鷺亭

没年:文政2?(1819)
生年:生年不詳
江戸後期初頭の戯作者。江戸久松町(一説に本船町)の家主の家に生まれ,遊蕩で家産を使い果たし,川崎大師河原で手習いの師匠の傍ら戯作に活躍したといわれるが,その実生活についてはほとんど分からない。本名は猪狩貞居。浜町亭,関東米など多くの別号を用いる。戯作活動は寛政1(1789)年から明らかで,初めは洒落本作者として顕れ,その後中本型読本に新機軸を開く傍ら,噺本や滑稽本,読本などに活躍。一時期戯作を中断するが,文化末年(1818年ごろ)には合巻や滑稽本で再度活動する。寛政の改革で前期戯作者が退場した折,その空隙を埋める作者として,一通りの漢学素養を示す作品を多く提供し,後期戯作へのつなぎ役を果たすとともに,中本型読本や滑稽本の分野でも,何かと新趣向を試みていて,一癖ある戯作者といえよう。『実語教童子教証註』などの真面目な著述もある。没年に関しては,文政2(1819)年泥酔して水死したと伝えられるのみ。<参考文献>棚橋正博「振鷺亭論」(『近世文芸・研究評論』1976年10月号)

(中野三敏)

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