捌・裁(読み)さばき

精選版 日本国語大辞典 「捌・裁」の意味・読み・例文・類語

さばき【捌・裁】

〘名〙 (動詞「さばく(捌)」の連用形の名詞化)
① 物や道具などの扱い。手際のよい扱いこなし。
※応仁記(15C後)二「六角方の敗軍に鑓のさばきが不成して」
② 物事の管理や処理。処置。
※天草本伊曾保(1593)イソポの生涯の事「クガイノ sabaqi(サバキ) アルイワ ナイショウノ トリアツカイ ナドワ」
※浮世草子・風流曲三味線(1706)二「万事ひとりのさばきにて、三十五人の手代どもをまはし」
③ (裁) 正邪善悪を判定すること。裁決裁断。審判。また、特に、キリスト教で、神による最後の審判をいうこともある。
※勝山記‐弘治二年(1556)「屋刑様の御意にて悉く廿人衆の道理に御さはき候」
※浮世草子・新可笑記(1688)三「かかる扮(サハキ)理非の二つは明白にして」
④ 支払い。遊女屋の揚代、祝儀
※浮世草子・本朝二十不孝(1686)一「彌郎の花代茶屋の捌(サバ)き」
⑤ 商品を売ること。
連歌連句の席で、宗匠が付句の運びがうまくいくよう指導すること。
俳諧・滑稽太平記(1679頃)三「連歌は昌琢誹諧は愚さばきなり」
⑦ 鷹詞で、犬をつなぐ綱。
※養鷹秘抄(15C前か)「たかぜうよりしていぬやりにつかりをたてよといへば、さはきをはなしてやる物也」
⑧ 「さばきがみ(捌髪)」の略。
歌舞伎隅田川花御所染(1814)三立「かつらきの様(やう)なる、さばきの鬘(かつら)にて蝋蠋を灯したる鼎を冠り」
囲碁で、弱い石、孤立した石の始末をうまくつけること。枝石を捨てて主力を逃げたり、時にはその石を犠牲にして、大勢をリードする手段
将棋で、駒の性能を十分に発揮させて有利に局面を進展させること。

さば・く【捌・裁】

[1] 〘他カ五(四)〙
① 物や道具、材料などを、じょうずに扱いこなす。また、うまく手で解き分ける。
※壬二集(1237‐45)「かがり火の早瀬にくだすうかひ舟さばく手縄(たなは)の影ぞ乱るる」
② 割る。裂く。特に、料理の材料を包丁でばらばらに切り分ける。
餓鬼晩餐(1974)〈富岡多恵子〉「魚をさばき刺身、塩焼き、アラ煮をこしらえて」
③ 複雑にいりくんだ事柄や、面倒なことを整理する。うまく処理する。始末をつける。
※京大図書館本周易抄(1477)屯「我ひとりしてさばかうとすれば、やうやう此程請取た程に」
④ 事理を説明する。説きあかす。
⑤ (裁) 理非を明らかにする。正邪善悪を判定する。裁判する。
※玉塵抄(1563)一一「とがつみのことをことわりさばくぞ」
⑥ 品物を売って整理する。売りさばく。
※和英語林集成(初版)(1867)「ニヲ sabaku(サバク)
⑦ 遊里などで、諸事をうまく処理する。揚代などを支払う。
※浮世草子・好色一代男(1682)三「揚屋町に行ば、日来(ひころ)の大臣よろしくさばき置るるとみえて」
⑧ 連歌、連句の席で、宗匠が付句の運びを吟味指導する。
⑨ 遊女屋で客をことわる。〔商業符牒袖宝(1884)〕
⑩ 将棋で、駒の性能を十分に発揮させて局面を有利に進展させる。「駒を捌く」
[2] 〘自カ下二〙 ⇒さばける(捌)

さばく・る【捌・裁】

〘他ラ四〙
① とりあつかう。とりはからう。処理する。捌く。
※却癈忘記(1235)上「あぶらさばくりしては〈略〉かならず手をのごひて、文をさばくるべき也」
※源平盛衰記(14C前)九「朝な夕なの渡居(わたらひ)を、さばくる者もなければ」
② もてあそぶ。いじくりもてあそぶ。
※御伽草子・花子ものぐるひ(室町時代物語大成所収)(江戸初)「あふぎをのみさばくりゐければ」
③ (裁) 善悪・理非などを勝手に判断する。裁断する。決めつける。
※仮名教訓(室町後)「人のよしあし、さはくらず」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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