捕・捉(読み)とらえる

精選版 日本国語大辞典 「捕・捉」の意味・読み・例文・類語

とら・える とらへる【捕・捉】

〘他ア下一(ハ下一)〙 とら・ふ 〘他ハ下二〙 手もとに取りおさえた状態を持続させる。
① 人や生き物をつかまえる。逮捕する。捕獲する。
(イ) 人をつかまえる場合。
書紀(720)雄略一四年四月(前田本訓)「天皇、〈略〉人をして根使王の宅(いへ)を見使む。〈略〉収(トラヘ)て之を殺しつ」
※虎明本狂言・賽の目(室町末‐近世初)「ひめはおとこをとらへて、はなすまひとする」
(ロ) 動物をつかまえる場合。
※書紀(720)神功元年三月・歌謡「淡海の海(み) 瀬田の渡りに 潜く鳥 田上(たなかみ)過ぎて 宇治に等邏倍(トラヘ)つ」
② 人や物の部分をつかむ。
(イ) 手足や人に付属するものをつかむ場合。
※竹取(9C末‐10C初)「逃げて入る袖をとらへ給へば」
(ロ) 物を手でつかむ。にぎる。
※枕(10C終)二三八「ただ手のかぎり笠をとらへさせて」
③ 抽象的な事柄を掌握する。
(イ) 時間や時期についていう。
明暗(1916)〈夏目漱石〉三七「津田は機会を捉(トラ)へてすぐ腰を上げた」
(ロ) 事実や知識を把握する。
※ものいわぬ農民(1958)〈大牟羅良〉生きている農村調査なり研究なりが、どれだけ生きた農村や農民の姿を正しくとらえてなされているかが」
(ハ) (「人をとらえる」「心をとらえる」などの形で) 強く影響を及ぼしたり、心をひきつけたりする状態をいう。
有明集(1908)〈蒲原有明絶望「この現(うつつ)われを囚(トラ)へて、日は檻(をり)の外よりぞ酷(むご)くも臨む」
[補注]室町時代ごろからヤ行にも活用した。→とらゆ(捕)

とらま・る【捕・捉】

〘自ラ四〙
① 取りおさえられる。つかまる。
咄本・蝶夫婦(1777)万年のあらそひ「亀は万年生きるといふが〈略〉どふして万年の数がしれるもんだ。〈略〉ハテ、とらまった時が百年め」
② しっかりと取りつく。つかまる。
※俳諧・享和句帖‐三年(1803)一〇月一日「霜どけやとらまる枝は茨也」

とらま・える とらまへる【捕・捉】

〘他ア下一(ハ下一)〙 (「とらえる」と「つかまえる」との混淆した語。室町時代頃からヤ行にも活用した) 「とらえる」「つかまえる」に相当するくだけたいい方。
※天草本平家(1592)四「アクシチビャウエ ワ toramayerarete(トラマエラレテ)、ウツノミヤニ アヅケラレタ」

とら・ゆ【捕・捉】

〘他ヤ下二〙 (ハ行下二段動詞「とらふ(捕)」から転じて、室町時代頃から用いられた語。多くの場合、終止形は「とらゆる」の形をとる) =とらえる(捕)
※寛永刊本蒙求抄(1529頃)一〇「あれに値遇した者までもとらゆるぞ」

とら・う とらふ【捕・捉】

〘他ハ下二〙 ⇒とらえる(捕)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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