掛ける・懸ける(読み)かける

大辞林 第三版の解説

下一 [文] カ下二 か・く
物をほかの物に取り付ける。
物を壁や構造物の高い所に運んで行って上部を固定する。上方に掲げる。他の物にぶらさげる。 壁に絵を-・ける 戸口に表札を-・ける 窓にカーテンを-・ける 帆を-・けた船
自在鉤にかけて火の上に置いたことから 鍋などを火の上にのせる。 鍋を火に-・ける
竿秤さおばかりの鉤にかけて重さを測ったことから はかりに載せて重さを測る。 肉を秤に-・ける
椅子などの上に座る。 椅子に腰を-・ける
人を、罰として高い所につるしたり置いたりする。 罪人を十字架に-・ける 獄門に-・ける
物を、取り外しのできるような状態で他の物に取り付ける。 眼鏡を-・けた人 上着のボタンを-・ける
組んだもので獲物を捕らえる。 兎をわなに-・ける 計略に-・ける
(「気にかける」などの形で)気持ちをそこに置く。いつもそのことに対して配慮する。思いやる。 子の将来を気に-・ける 心に-・ける 歯牙しがにも-・けない
相撲で、足を相手の足にからめる。 右足を-・けて相手を倒す
錠などを固定して動かないようにする。 ドアに鍵を-・ける 犯人に手錠を-・ける
上方から物を置く。
ある物を、他の物を覆うように置く。かぶせる。 荷物の上に覆いを-・ける 床にワックスを-・ける
液体や粉末を上方から注ぐ。 背中にお湯を-・ける 肉にコショウを-・ける ご飯に生卵を-・けて食べる 振り-・ける あびせ-・ける
他にある作用を与える。他に影響を及ぼす。
好ましくないことを相手に及ぼす。 妻にはずいぶん苦労を-・けてきた 他人に迷惑を-・ける
人に対してある感情を持つ。先輩に思いを-・ける犯人に情けを-・ける …に疑いを-・ける
願い・期待をそこに置く。託す。神様に願がんを-・けるひとり息子に期待を-・ける …に一縷いちるの望みを-・ける
言葉などによる働きかけをする。
言葉を人に向けて発する。部下に言葉を-・ける生徒に声を-・ける
言葉による働きかけを行う。相手になぞを-・ける新入生に誘いを-・けるおどしを-・ける
魔法・麻酔など特別な作用を及ぼす。 お姫様に魔法を-・ける 患者に麻酔を-・ける 絶対勝つんだ、と自分を暗示に-・ける
(力を)加える。 右足に体重を-・ける 一方の電極に電圧を-・けると…
道具を用いて表面を加工する。 材木にかんなを-・ける やすりを-・ける ワイシャツにアイロンを-・ける ミシンを-・ける 廊下に雑巾を-・ける 丸太にみがきを-・ける
課す。 贅沢品に重い税を-・ける
攻撃を加える。 夜襲を-・ける 相手に技を-・ける 追い討ちを-・ける
ある物を他の物に渡す。また作用を一方から他方へ向ける。
(「架ける」とも書く)一方から他方へさし渡す。 川に橋を-・ける 二階にはしごを-・ける
電話機を操作して先方と話をする。 会社に電話を-・ける
手や足など体の一部をほかの物の上に軽くおく。 ドアの取っ手に手を-・ける 階段に片足を-・ける
取り扱う。対象として扱う。
論議・審議の対象にする。 この問題を会議に-・ける 被告を裁判に-・ける
検査・診察の場所・場面に置く。 薬品を分析装置に-・ける …を医者に-・ける
相手に見えるようにする。 私の秘蔵の品をお目に-・けます
人を殺傷する。 敵を刀に-・ける 我が子を手に-・ける ひづめに-・ける
機械を機能させる。 自動車のエンジンを-・ける ブレーキを-・ける ラジオを-・けっぱなしにする レコードを-・ける
(「繫ける」とも書く)結びつけて留める。つないで留める。 小包に紐を-・ける たすきを-・けて掃除をする
ある場所に仮設の建物などを組み立てる。 河原に小屋を-・ける 小鳥が街路樹に巣を-・ける
芝居や興行を行う。 来月は勧進帳を-・ける予定
数を乗ずる。掛け算をする。 ⇔ 割る 2に3を-・けると6
基準の値段より割高な値段を付ける。掛け値をする。 市価よりも二割がた-・けて売る
(「保険をかける」の形で)ある物について保険の契約をして掛け金を払う。 美術品に保険を-・ける
言葉と言葉に関連を持たせる。
ある語句と他の語句との間に意味関係や文法関係をもたせる。 関係代名詞を名詞句に-・ける
掛け言葉を言う。 『長雨』を『眺め』に-・ける
かこつける。意味づける。 妹が名に-・けたる桜/万葉集 3787
時期・場所について、ここからそこまでの間ずうっと。 夏から秋に-・けて咲く花 宮城県から青森県に-・けて大雪だ
それに関して。その面で。 暗算に-・けては彼の右に出る者がない
あること・物のために費用・労力・時間などを費やす。 服装に金を-・ける 手間ひま-・けて作った人形
交配する。 レグホンにコーチンを-・ける
(「鼻にかける」の形で)
鼻声を出す。 鼻に-・けて歌う
自慢する。 一流大学を出たことを鼻に-・ける
(動詞の連用形の下に付いて)
相手に向かって物事をする。 話し-・ける 働き-・ける
…し始める。途中まで…する。 言い-・けてやめる 長編を読み-・ける
もう少しで、ある動作を始めそうになる。もう少しでそういう状態になる。 死に-・ける 川でおぼれ-・ける
兼ねる。 国の守、斎いつきの宮のかみ-・けたる/伊勢 69
目標にする。目指す。めがける。 阿波の山-・け漕ぐ舟/万葉集 998
よりどころにする。託する。 かくたまさかの御慰めに-・け侍る命のほども/源氏 澪標
含める。こめる。 行く末-・けて契りたのめ給ひし人々/源氏 松風
乗り物などをある場所に止める。
車をある場所に止める。つなぐ。さて車-・けてその崎にさしいたり/蜻蛉
船をある場所に停泊させる。係留する。日葡
牛馬をある場所につなぐ。輪強き御車にいちもちの御車牛-・けて/大鏡 道隆
あらかじめ約束する。 秋-・けて言ひしながらもあらなくに木の葉降りしくえにこそありけれ/伊勢 96
だます。ひっかける。 今来むと言ひしばかりに-・けられて/古今六帖 5
数に入れる。加える。 お供-・けて三人ぢや/浄瑠璃・丹波与作 かかるに対する他動詞
[慣用] 圧力を- ・ 後足で砂を- ・ 命を- ・ 腕に縒りを- ・ 鎌を- ・ 声を- ・ 尻に帆を- ・ 尻目に- ・ 手に- ・ 手を- ・ 手塩に- ・ 天秤てんびんに- ・ はかりに- ・ 拍車を- ・ 股に- ・ 水を- ・ 目を- ・ 山を- ・ 輪を-
[表記] かける掛・懸・架・ 繫 ・賭
「掛ける」は“ぶらさげる。作用を及ぼす。費やす”の意。「壁に絵を掛ける」「計略に掛ける」「妻には苦労を掛けた」「衣服に金を掛ける」「手間暇掛けて育てた菊」  「懸ける」は“運命をともにする。金品を提供する”の意。「一生を懸けた仕事」「犯人に賞金を懸ける」  「架ける」は“かけ渡す”の意。「川に橋を架ける」  「繫ける」は“つないで留める”の意。「ひもを繫ける」  「賭ける」は“かけごとをする。失う覚悟でする”の意。「最後のレースに賭ける」「命を賭けた恋」

出典 三省堂大辞林 第三版について 情報