推理(読み)すいり(英語表記)inference

翻訳|inference

精選版 日本国語大辞典 「推理」の意味・読み・例文・類語

すい‐り【推理】

〘名〙
① 伝統的論理学で、既知の判断前提)から、新しい判断(結論)をみちびくこと。前提が一つの場合は直接推理、二つ以上の場合は間接推理といい、直接推理は、判断の変形によるものと、対当関係によるものとがある。間接推理は普通、三段論法と称され、演繹(えんえき)的推理と帰納的推理とに分かれる。推論。〔改訂増補哲学字彙(1884)〕
当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉一一「帰納法にて推理(スヰリ)せん歟」
② 既知の事実をもとに、未知事柄についておしはかること。推論。
青年(1910‐11)〈森鴎外一九「これは随分思ひ切った推理(スヰリ)である」

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デジタル大辞泉 「推理」の意味・読み・例文・類語

すい‐り【推理】

[名](スル)
ある事実をもとにして、まだ知られていない事柄をおしはかること。「いくつかの条件から問題を推理する」
論理学で、前提から結論を導き出す思考作用。前提が一つのものを直接推理、二つ以上のものを間接推理という。
[類語]推論類推論理

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改訂新版 世界大百科事典 「推理」の意味・わかりやすい解説

推理 (すいり)
inference

一般的には,いくつかの前提命題A1,……,Ann≧1)からある一つの結論命題Bを導き出すことを推理(推論reasoning)といい,演繹的推理(または論理的推理)と帰納的推理がその代表的な例であるといえる。しかし厳密な意味での〈推理〉としては,論理的に正しい推理をさすことが多い。

(1)伝統的論理学ではAIEOの四つの命題の型(判断)が存するが,前提命題が1個の推理を直接推理,前提命題が2個以上の推理を間接推理と呼ぶ。例えば〈すべてのSPである〉から〈あるSPである〉を導出することは直接推理であり,〈すべてのS1S2である〉〈すべてのS2S3である〉〈すべてのS3S4である〉という3個の前提命題から〈すべてのS1S4である〉を導出することは間接推理である。直接推理には(a)換質,(b)換位,(c)この両者の組合せによる推理((a)(b)(c)は変形推理と総称される),および(d)対当による推理がある。一方,間接推理においては,三段論法(すなわち,前提命題が2個の推理)がその中枢となる。なぜなら,いかなる間接推理も三段論法の組合せであると考えることができるからである。

(2)現代論理学でもさまざまな推論の型が定式化されている。次はその例である。(a)ABを任意の命題として,〈AならばB〉とAという二つの命題からBを導出すること。(b)Pを任意の述語として,〈すべての個体xについて,xPである〉から〈Pであるところのなんらかの個体xが存在する〉を導出すること。結局のところ,論理的に正しい推理とは,以上の諸例が示すように(主語Sや述語Pの意味内容にもとづくことなく)ただもっぱら前提命題A1,……,Anと結論命題Bとの形式的な関係にのみ(いいかえれば,ただもっぱらA1,……,AnBに含まれている論理語の意味にのみ)もとづいてなされる推論である。
演繹 →帰納
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百科事典マイペディア 「推理」の意味・わかりやすい解説

推理【すいり】

論理学の概念で,1個または2個以上の判断(前提)から新しい判断(結論)を導き出すこと。推論ともいい,演繹帰納が代表例。前提が1個のものを直接推理,2個以上のものを間接推理という。前者はおおむね1個の判断を他の異なる形式で表したもので,それはさらに,対当推理(対当関係にある一方の判断の真偽から他方の判断の真偽を決める推理)と変形推理(判断の主語と述語とを交換したり,肯定を否定に変えるなどの操作を用いる推理)とに区別される。また後者はおおむね三段論法であり,演繹推理,帰納推理,類比推理などが属する。なお,推理の性質,すなわち前提と結論との関係は妥当・非妥当で表され,判断の性質である真・偽とは区別される。つまり,推理の妥当性と前提や結論の事実上の真偽とは無関係である。
→関連項目判断

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「推理」の意味・わかりやすい解説

推理
すいり
inference

手元にある証拠をもとにして、未来のこと、あるいはまだ真相がよくわかっていないことなどを推し量ること。だが、その際、直観的な飛躍に頼ることが多いものは、普通、推理の典型的なものとは考えられない。論証によってその正しさを示すことができるものが代表的なものとされるので、ときには、論証そのものを「推理」とよぶことがある。たとえば、伝統的論理学では、ただ一個の判断を変形して結論を得る論証を「直接推理」、二個の判断を前提として結論を導き出す三段論法を「間接推理」とよんでいる。自然科学者などが、実験的な結果と、既存の理論をもとにして行う推理は、部分的に、論証によって正当化できることも多いが、完全には論証に書き換えることができず、論理的には飛躍を含んでいることも多い。こういった推理は「帰納的推理」とよばれ、その一部は統計学によって定式化されている。

[吉田夏彦]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「推理」の意味・わかりやすい解説

推理
すいり
reasoning; inference

推論。1つ,あるいは2つ以上の既知の判断 (前提) から新しい1つの判断 (結論) を導き出すことで,直接的推理と間接的推理とがある。後者の例としては,演繹的推理,帰納的推理,比論などがある。また,伝統的形式論理学で普通推論式といわれるのは,アリストテレスによって明確にされた三段論法であり,これは大前提,小前提,結論の順に推論を進めていくものである。これには定言的,仮言的,選言的三段論法があるが,アリストテレスのものは主として定言的三段論法である。

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普及版 字通 「推理」の読み・字形・画数・意味

【推理】すいり

予測する。

字通「推」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の推理の言及

【直観】より

…intuitionは,〈凝視する〉とか,ときには〈瞑想する〉といった意味を有するラテン語intueriに由来し,一般に直接的知識を意味するが,ドイツ語のAnschauungも,事物への接近・接触などを表す接頭辞anと,意志的な見る行為を意味するschauenとからなり,やはり同様の知のあり方を意味する。日本語の〈直観〉も,それらの訳語として,総じて推理(推論)や伝聞によらない直接知を指す。ただし,内容的には,どのような知識を直接的と見るかによって,意見が分かれてくる。…

※「推理」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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