掴・捕・捉(読み)つかまえる

精選版 日本国語大辞典 「掴・捕・捉」の意味・読み・例文・類語

つかま・える つかまへる【掴・捕・捉】

〘他ア下一(ハ下一)〙 つかま・ふ 〘他ハ下二〙
① しっかりとおさえる。にぎってはなさない。
※東大寺諷誦文平安初期点(830頃)「頸を掣(ツカマへ)胸を掣(つかまへ)
※長門本平家(13C前)一四「手塚が郎等の押付の板をつかまへて」
② 逃げないようにとりおさえる。また、その場にとどめる。ひきとめる。〔詞葉新雅(1792)〕
※交隣須知(18C中か)二「カニ ツカマエテ ミツニ ハナソフ」
浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉三「今も人を捉(ツカマ)へて口説いて口説いて困らせ抜いた」
物事の意味や、他人の意図などを確かに理解する。
文明開化(1873‐74)〈加藤祐一〉二「天地自然の理といふものを、しっかりとつかまへて」
④ (「…をつかまえて」の形で) …を話や行為の対象にする。「…に向かって」「…に対して」の意となる。
落語成田小僧(1889)〈三代目三遊亭円遊〉「俺を捕(ツカ)めエてお伴さんてエのは何(ど)う云訳です」
松川裁判について(1958)〈広津和郎〉「判決文はそこを掴まえて、何とかして十五日謀議成立の動機を見つけようとしたのであります」
[補注]室町時代頃からヤ行にも活用した。→つかまゆ(掴)

つかま・る【掴・捕・捉】

〘自ラ五(四)〙
① 手で物にしっかりととりすがる。しがみつく。すがる。
※浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉二「お勢が開懸けた障子に掴まッて」
② とらえられる。手でおさえられる。また、その場にとどめさせられる。ひきとめられる。
滑稽本浮世風呂(1809‐13)四「此ぼくねんじんにつかまって、みじめヱ見るぜ」
※滑稽本・浮世床(1813‐23)初上「鯉がひとりでに飛あがって氷の上でつかまるといふが」

つかま・ゆ【掴・捕・捉】

〘他ヤ下二〙 (ハ行下二段活用の「つかまふ」から転じて、室町時代頃から用いられた語。多くの場合、終止形は「つかまゆる」の形をとる) =つかまえる(掴)
日葡辞書(1603‐04)「Tçucamaye, uru, eta(ツカマユル)〈訳〉なにかをつかむ」
※天理本狂言・賽の目(室町末‐近世初)「むこ、にぐるところを、おいまわしてつかまゆる」

つかま・う つかまふ【掴・捕・捉】

〘他ハ下二〙 ⇒つかまえる(掴)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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