教・訓(読み)おしえる

精選版 日本国語大辞典 「教・訓」の意味・読み・例文・類語

おし・える をしへる【教・訓】

〘他ア下一(ハ下一)〙 をし・ふ 〘他ハ下二〙
① 行動や身の処し方などについて注意を与えて導く。いましめる。さとす。
書紀(720)神代下(水戸本訓)「因りて教(ヲシヘ)まつりて曰(まう)さく『此の鈎(ち)を以て汝(いましみこと)の兄(このかみ)に与(あた)へたまはむ時に〈略〉貧鈎(まちち)と曰たまひて、然る後に与へたまへ』」
※天理本金剛般若経集験記平安初期点(850頃)「一切の人を勧化(ヲシヘ)て此の経を読誦せしむ」
② 知っている事や自分の気持、要求などを他の人に告げ知らせる。
古今(905‐914)春下・七六「花散らす風のやどりはたれか知る我にをしへよ行きてうらみむ〈素性〉」
③ 知識、技芸などを身につけるようにさせる。教授する。
※石山寺本金剛般若経集験記平安初期点(850頃)「有知を暁(ヲシヘ)喩さむことを望ひ」
蜻蛉(974頃)下「ちひさき人には手習ひ歌よみなどをしへ」
④ おだてたりして、悪い事をするようにしむける。
今昔(1120頃か)二「妻有て此事を羅漢、夫に語らむ事を恐れて、賊人を教へて此の羅漢を殺しつ」
[語誌](1)平安時代の「をしふ」は、和文では「〈人〉に〈物〉ををしふ」の構文をとるのが通例であるのに対し、漢文訓読文では、和文と共通の構文の他に①の挙例「天理本金剛般若経集験記平安初期点」のように「〈人〉ををしふ」の構文もとる。
(2)④の意味は、本来使役の辞である「教」字を、「をしへて~(せしむ)」とよむ訓法が平安時代後期以降成立したことに起因し、「~」の本動詞の意味が特に悪い結果を生じさせたり、悪意に基づく所作であったりした場合に、「悪いことをしむける」の意味に解されるようになったのであろう。
(3)室町時代ごろから「をしゆ(る)」が使われたが、その明らかな例は「おしゆ」の項にあげた。→教ゆ

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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