教育機器(読み)きょういくきき

精選版 日本国語大辞典 「教育機器」の意味・読み・例文・類語

きょういく‐きき ケウイク‥【教育機器】

〘名〙 教育の方法に使用される機械、器具教授機械、反応分析機、視聴覚教具、語学実験室などの総称。現代的な教育媒体として、一九七〇年代になって普及しはじめた。

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デジタル大辞泉 「教育機器」の意味・読み・例文・類語

きょういく‐きき〔ケウイク‐〕【教育機器】

教育効果を高めるために使う機器オーバーヘッドプロジェクターOHP)・ティーチングマシンランゲージラボラトリーLL)・テレビなど。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「教育機器」の意味・わかりやすい解説

教育機器
きょういくきき

教育機器とは、狭義には、視聴覚教具と、電子工学的機構を内蔵した教具とを意味するが、とくに、それぞれを教育工学の意図する教育のシステム化を考慮して活用するときの総称である。したがって、それぞれの教具が単体としての独立した機能と役割をもちながらも、教授・学習過程にシステムの一部として組み入れられ、その総体としての機能と役割も発揮するような、授業の効率化をねらって活用される教具であるということができる。一方、広義の教育機器は、狭義のそれに事務機器の一部を加えた総称である。

[篠原文陽児]

分類と種類

教育機器には多種多様のものがあり、これらを分類することにより、教育システムや教育活動の構造と機能が明確になり、計画的に活用する視点が得られる。

 教育機器の分類には、それぞれの機器のもつ機能・特性による分類、利用形態による分類など多々あり、定まった見解は存在しない。もっとも一般的なものは、次のような分類である。

(1)情報提示機器 視聴覚教具とよばれてきたもので、写真、ポスター、スライド投映機、実物投映機、OHP(オーバーヘッドプロジェクター)、16ミリ映写機、ラジオ、テレビジョン、VTRなどのほか、プレゼンテーション用ソフトの利用を前提としたコンピュータ端末と大型プロジェクターなども含まれる。

(2)反応測定・訓練機器 ラボ装置(LL=ランゲージ・ラボラトリーLanguage Laboratory、ML=ミュージック・ラボラトリーMusic Laboratory)、ティーチング・マシンシミュレータ(模擬訓練機器)など。

(3)提示・反応・診断評価のための自動制御機器 CAIシステム、Webラーニング・システムやeラーニング・システムとよばれるオンライン学習システムなど。

(4)事務機器 複写機、FAX、パーソナルコンピュータ、コンピュータ通信専用回線、CMIシステムなど。

[篠原文陽児]

『21世紀教育の友編『機器教育とは何か』(1977・小学館)』『奥田真丈著『現代学校教育全集14 教科書・教材教具』(1980・ぎょうせい)』『日本視聴覚教材センター編・刊『視聴覚教育メディアの活用――文部省「視聴覚教育メディア研修カリキュラムの標準」準拠』(1992)』『星野昭彦他著『視聴覚を刺激するメディア』新訂版(1999・東洋館出版社)』『日本視聴覚教具連合会編・刊『視聴覚機器ガイドブック』各年版』

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改訂新版 世界大百科事典 「教育機器」の意味・わかりやすい解説

教育機器 (きょういくきき)

教育目標を効率よく達成させるために従来の教具の範囲をこえて広く開発された機械や器具。最近ではかなりの部分が電気製品になり,しかも複雑化しており,具体的な取扱いにもある程度の技術習得や訓練が必要とされる。日本では1960年代以降の技術革新の波にのって教育産業が発達し,きわめて多種類の機器を開発して教育現場へ普及させてきた。そのうちの代表的なものでは,カラーテレビ,ステレオ,OHP(オーバーヘッドプロジェクター)などの視聴覚機器や,VTR(ビデオテープレコーダー),ラジオ・カセットなどの再生器,電子計算器類,LL(ランゲージ・ラボラトリー),ティーチング・マシン,プログラム学習器などの個別学習機器がある。これらの機器の使用によって,教育場面では次のような効果が期待されている。第1には,黒板とチョークによる授業形態から抜け出て,視聴覚を十分に駆使した授業の改善工夫ができることである。第2には,テレビや映画などの映像から必要な部分を選んだり組み合わせたりすることによって,個々の教師が多様な教材をつくり出せるようになることである。第3には,プログラム学習を組み込むことによって,生徒の個別学習を指導することが容易になることである。第4には,取材から編集,放送までに至る学校放送の充実がもたらされることである。これによって校庭でのいっせいの朝会にかわって,テレビによる各教室ごとの情報伝達もできるようになる。第5には,授業場面を音や映像に記録しておき,それを授業の反省や分析に利用することである。

 近年ではCAI(computer assisted instructionの略。コンピューター利用教育)の開発も盛んで,あらかじめ学習過程をプログラムに組んでおき,個々人の反応や進度に応じて評価を与えたり次の学習の課題を指示したりすることもできるようになった。教育機器は,ある程度の範囲で人間にかわって教育の機能を代行することができるが,その限度をこえて依存しすぎるようになると機械に人間がふりまわされるという恐れも出てくるので,慎重に用いる必要がある。
教育工学 →視聴覚教育
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の教育機器の言及

【視聴覚教育】より

…60年代以降はテレビが教育の場に利用され,学校放送番組や通信教育や教養講座などが放映されるようになった。さらには教育産業界による教育機器の開発が進められ,教材をプログラム化し学習の指導を行うティーチング・マシンが登場した。これらはプログラムの開発と機器の開発・利用の両方の研究を促進し,教育工学という新分野をも切り開いた。…

※「教育機器」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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