日本大百科全書(ニッポニカ) 「散米(さんまい)」の意味・わかりやすい解説
散米(さんまい)
さんまい
神仏や墓所に詣(もう)でたとき、あるいは祓(はらい)を行うときにまき散らす米。ウチマキ、オヒネリ、サンクなどともいう。オヒネリはその包み紙をひねるからの称であるが、サンクは散供であって、散らすお供物の意味である。しかしお供物はもともと散らすべきものではなく、もっぱら奉るべきものであった。それを散らすというのは、その対象がこの場合は人より下位の精霊(せいれい)にあるからであった。すなわち散米は本来荒び疎(うと)び来るものに与えて満足させて去らせるという、神道儀礼としての道饗(みちあえ)、仏教儀礼としての施餓鬼(せがき)と同趣のものであった。それがのちには混乱し、霊なるものを対象とする米であれば、すべてこれを打ちまきとも散供ともいうようになったのである。
[石塚尊俊]