敷栲の・敷妙の（読み）しきたえの

精選版 日本国語大辞典

しきたえ‐の しきたへ‥【敷栲の・敷妙の】

枕

① 「しきたえ」は敷物とする栲(たえ)、すなわち寝具の意となるところから、寝具として使われる「床」「枕」「手枕」などにかかる。

※万葉（８Ｃ後）五・九〇四「明星(あかぼし)の 明くる朝(あした)は 敷多倍乃(しきタヘノ) 床(とこ)の 辺去らず」

※古今（905‐914）恋一・五〇四「わが恋を人しるらめやしきたへの枕のみこそしらばしるらめ〈よみ人しらず〉」

② 夜の衣や袖(そで)なども、下に敷いて寝るところから、「衣」「袖」「袂」「黒髪」などにかかる。「黒髪敷きて」にかかる場合は、同音の繰り返しによるともいう。

※万葉（８Ｃ後）二・一三五「ますらをと 思へる我も 敷妙乃(しきたへノ) 衣の袖は 通りて濡れぬ」

※万葉（８Ｃ後）四・四九三「置きて行かば妹恋ひむかも敷細乃(しきたへノ)黒髪敷きて長き此の夜を」

③ 「家」にかかる。夜床のある家の意からか。一説に、寝(い)と同音であるところから。

※万葉（８Ｃ後）三・四六一「留めえぬ命にしあれば敷細乃(しきたへノ)家ゆは出でて雲隠りにき」

④ 袖や床と同音を語頭にもつ地名「袖師の浜」「鳥籠(とこ)の山」「とこの海」などにかかる。

※新勅撰（1235）秋上・二〇二「寄る波の涼しくもあるか敷妙の袖師(そでし)の浦の秋の初風〈藤原信実〉」

出典　精選版 日本国語大辞典