日本大百科全書(ニッポニカ) 「新ロマン主義(日本)」の意味・わかりやすい解説
新ロマン主義(日本)
しんろまんしゅぎ
19世紀西欧の世紀末芸術の影響を受けた、明治末の高踏的、享楽的、退廃的、異国情緒的、耽美(たんび)的、都会的な情調を重んじる芸術傾向をいう。文学史的には、『スバル』(1909~13)や『三田文学』(1910~25)といった雑誌を拠点に活躍したころの永井荷風(かふう)、谷崎潤一郎、北原白秋(はくしゅう)、吉井勇、木下杢太郎(もくたろう)らの文学をさす。彼らは『明星』(1900~08)のロマンチシズムを止揚し、また当時全盛の自然主義文学に反発し、パンの会を結成した。ここでの若い芸術家たちの活気に満ちた交流を背景に、新ロマン主義(耽美派ともいう)の文学が開花した。
[浅井 清]
『高田瑞穂著『近代耽美派』(1967・塙書房)』▽『野田宇太郎著『日本耽美派文学の誕生』(1975・河出書房新社)』