新神学(読み)しんしんがく

改訂新版 世界大百科事典 「新神学」の意味・わかりやすい解説

新神学 (しんしんがく)

明治20年代,ドイツより日本にもたらされた自由主義神学に対する呼称。1885年普及福音同盟より派遣された宣教師シュピンナーWilfrid Spinner(1854-1918)が来日,新教神学校を開設し,雑誌《真理》を発行してチュービンゲン学派の歴史的・批判的方法による聖書の合理主義的理解にもとづく自由主義的キリスト教を宣教した。聖書を無謬の神の啓示の書とせず,宗教的記録として倫理的な意義を求めたその教説は,それまで超自然的な福音理解を正統とするイギリスやアメリカの宣教師の影響のもとにあった日本のプロテスタント教会教職信徒に大きな衝撃を与え,教会を去り信仰を喪失する者が相次いだ。このことは教会的伝統と罪の意識とを欠いたためと考えられるが,他方,教会側も新神学の方法を学んで神学研究,聖書研究を進め,福音主義の立場を明確なものとしていった。新神学の影響を示す著作にはフライデラーの訳書《自由神学》(1892),金森通倫《日本現今ノ基督教並ニ将来ノ基督教》(1891),横井時雄《我邦の基督教問題》(1894)などがある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「新神学」の意味・わかりやすい解説

新神学
しんしんがく

ドイツからの宣教師シュピンナー (1885来日) ,アメリカからの宣教師ナップ (89来日) らの活動によって起った明治中期における日本のプロテスタント教会内部の自由主義神学思想。この思想は近代哲学や科学思想の助けをかりて,キリスト教や神学に対して自由な解釈をし,人間中心的・合理主義的立場を唱えて知識人のためのキリスト教を主張した。多くの人々の共鳴を呼び,教会内部に大きな影響を与えた時期もあった。

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