日光(市)(読み)にっこう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「日光(市)」の意味・わかりやすい解説

日光(市)
にっこう

栃木県北西部に位置する国際観光都市。1954年(昭和29)日光町が小来川(おころがわ)村を編入して市制施行、2006年(平成18)今市市(いまいちし)、上都賀(かみつが)郡足尾町(あしおまち)、塩谷(しおや)郡栗山村(くりやまむら)、藤原町(ふじはらまち)を合併地名のおこりには諸説があり、僧空海が書いた勝道上人(しょうどうしょうにん)碑文は男体山(なんたいさん)を補陀落山(ふだらさん)と記し、これに二荒(ふたら)の字をあて、「にくゎう」と読み、日光をあてたとするのが通説となっているが、『滝尾(たきのお)建立草創日記』によると、中禅寺(ちゅうぜんじ)の鬼門洞穴から年2回大風が吹き出し、国内を荒らしたので二荒といった。空海がこれを鎮め二荒を日光と改名したとする説もある。人口7万7661(2020)。

[平山光衛]

自然

北は帝釈(たいしゃく)山地を境に福島県、西は鬼怒(きぬ)川源流域の山々や、白根山(しらねさん)(2578メートル)、皇海山(すかいさん)などを境に群馬県と接する。いずれも2000メートル級の山々である。南は1000~1500メートルの足尾山地北縁部にまたがる。面積1449.83平方キロメートルは県下一位。森林面積は市域面積の約8割を占める。市域の北部は鬼怒川の上流域で温泉地帯を成す。その南には日光火山群と大谷(だいや)川流域が広がる。日光火山は女峰山(にょほうさん)、男体(なんたい)山、大真名子(おおまなご)山、小真名子山、太郎山、白根山などからなり、その美しい山容に加えて、中禅寺湖(ちゅうぜんじこ)、湯ノ湖などの湖沼や湿原、滝など優美な自然景観に恵まれ、その大部分日光国立公園区域に含まれる。南部の薬師岳・地蔵岳の一帯は前日光県立自然公園に含まれる。2000メートル級の山岳地帯から500メートルほどの市街地まで標高差が著しく、気温は市街地で年平均約12℃、中禅寺湖畔では年平均7℃、8月は19℃と避暑に向いている。

[平山光衛]

交通

JR日光線、東武鉄道日光線、鬼怒川線、第三セクターの野岩鉄道(やがんてつどう)、わたらせ渓谷鉄道が通じる。国道119号が宇都宮に、120号が奥日光金精(こんせい)トンネルを通って群馬県沼田に、121号が今市を通って鹿沼(かぬま)、北部の山王トンネルで福島県会津地方に、122号が足尾を通り沢入(そうり)トンネルを抜けて群馬県桐生に通じる。有料の自動車専用道の日光宇都宮道路が清滝(きよたき)と宇都宮を結び、鬼怒川上流域の温泉地帯と塩原温泉郷(那須塩原市)をつなぐ鬼怒川有料道路が整備されている。

[平山光衛]

歴史

弥生(やよい)時代すでに集落が形成され、古墳時代の遺物も出土している。勝道上人が782年(延暦1)二荒山登頂に成功し、山麓(さんろく)の中禅寺湖(南湖)畔に神宮寺を創建し、日光開山は神仏習合の山岳信仰の地としての展開をみた。鎌倉時代は関東北方の鎮めとして日光山は幕府の信仰が厚く、室町時代にも修験道(しゅげんどう)の隆盛などで繁栄し、連歌(れんが)師宗長(そうちょう)は「院々僧坊五百に余り」と記した。豊臣(とよとみ)秀吉の小田原(おだわら)攻略に際し、日光山衆徒は北条氏に加担したため、中世以来の社領の大部分を没収され、急速に衰えた。僧天海(てんかい)が日光山貫主となり、1617年(元和3)徳川家康の遺骸(いがい)が久能(くのう)山から日光に移葬されてからふたたび繁栄した。とくに寛永(かんえい)の造営によって東照宮は面目を一変して、現在みる精巧華麗を極める建造物となり、「日光を見ずに結構というな」の名言を生んだ。明治維新後、神仏分離によって二社一寺に解体され、江戸時代幕府の聖地とされた特権は失われたが、人工の美は残り、これが、もとからの自然山水の美観とともに国立公園法指定の原動力となった。南西部の足尾では1611年(慶長16)から銅の採掘が始まり、足尾銅山は幕府の御用銅山となった。明治に入って古河(ふるかわ)鉱業(現、古河機械金属)の鉱山町として発展したが、1973年(昭和48)閉山となった。

[平山光衛]

産業

産業別就業者構成比は第一次産業5.3%、第二次産業28.5%、第三次産業66.2%となっており(2010)、観光中心ではあるが、工業都市の性格もあわせもつ。古河(ふるかわ)電工日光事業所のある清滝地区の金属工業のほか、食料品製造や伝統工業の日光彫、日光下駄(げた)、湯葉などの特産がある。

[平山光衛]

観光

表日光の日光東照宮、二荒山神社、輪王寺をはじめ、霧降高原(きりふりこうげん)、奥日光の山岳、湖、滝、鬼怒川、日光湯元などの温泉資源、足尾の銅山観光などもあって、国際的観光地として著名であり、年間約1150万人(2000~2010年)の内外観光客が訪れる。表日光地区が俗に「東武県古河(ふるかわ)市二社一寺町字日光」といわれるところに観光地としての一面をみることができる。日光杉並木街道附(つけたり)並木寄進碑は特別史跡および特別天然記念物に、「華厳瀑(けごんばく)および中宮祠(ちゅうぐうし)湖(中禅寺湖)湖畔」は国名勝に指定されている。なお、二荒山神社、日光東照宮、輪王寺は、1999年(平成11)に「日光の社寺」としてユネスコの世界遺産(文化遺産)に登録された。

[平山光衛]

『『日光市史』全3巻(1973~1979・日光市)』『『日光市史 史料編』全3巻(1986・日光市)』


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