日本広告審査機構(読み)にほんこうこくしんさきこう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「日本広告審査機構」の意味・わかりやすい解説

日本広告審査機構
にほんこうこくしんさきこう

広告と表示に関する自主規制機関広告主や新聞社、出版社、放送会社、広告会社および広告制作会社などの民間企業を会員とする。英語名称はJapan Advertising Review Organizationで、略称JARO(ジャロ)。悪い広告をなくし、正しいよい広告を育てたいという広告業界の願いにより、1974年(昭和49)に総理府(公正取引委員会)と通商産業省(現、経済産業省)の許可を受け、社団法人として設立され、2011年(平成23)に公益社団法人となった。JAROは1962年に制定された景品表示法の運用を踏まえ、アメリカで1912年に発足した広告業界の自主機関であるBBBBetter Business Bureau)をモデルとして構想された団体である。戦後の経済統制撤廃以降、激しい販売競争や消費者に対する不当誘因行為が問題となるなか、アメリカの取引慣行規則を模範として、事業者自らが規制の必要性を表明する役割を果たした。2016年2月時点の会員社は855社(広告主361社、新聞社82社、放送182社、出版50社、インターネット5社、広告会社151社、広告制作会社24社)。本部は東京都中央区銀座。組織は、審査部門と総務部門の2部門に大別される。審査部門は、消費者の苦情や問い合わせを基に、消費者被害につながる誇大広告や誤解を招く広告について、中立立場で公平に調査し、問題のある場合には、広告主などへ改善を促している。検証結果を不服としたり、異議が唱えられたりした場合には、学識経験者7名による審査委員会を開き、審議を尽くしたうえで裁定が下される。

 2014年度の電話等による相談受付件数は5110件(前年度比90.6%)で、2014年度から始まったウェブ上のオンラインご意見箱への相談件数は3326件、受付総数は8436件であった。これに対し、警告22件、要望6件、提言2件が示されている。

[編集部 2016年8月19日]

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知恵蔵 「日本広告審査機構」の解説

日本広告審査機構

広告・表示についての民間の自主規制機関。広告主の企業、新聞社・出版社・テレビ・ラジオなどの広告媒体、広告会社や広告制作会社などの会員で構成される公益社団法人で、うそやまぎらわしい表現をなくして広告の適正化を図るため、消費者などから相談を受け付けて広告を審査し、問題がある場合には広告主へ改善を促す。略称はJARO(ジャロ)。
1974年10月に設立。背景には、企業活動と共に広告活動が活発になり、企業間競争が激化する中で虚偽・誇大広告が社会問題化したことがある。60年に鯨肉や馬肉を牛肉と偽った「偽牛缶事件」が発覚し、広告を批判する消費者運動も高まった。68年に消費者保護基本法が制定されたことなどを受けて、広告界で自主規制体制の整備が検討され、米国の民間自主規制機関BBB(Better Business Bureau)などを参考にしてJAROが設立されたという。
苦情のうち広告主の回答で解決できない場合は、必要に応じて業界の専門家から成る業務委員会で審議した上で、広告主などに見解を出して広告の適正化を促す。それでも解決できない場合は、学識経験者7人で構成する審査委員会で審査し、裁定を下す仕組み。2009年度は、計5432件の相談を受け付け、うち苦情・意見は3647件だった。業務委員会で出した見解は、警告19件、要望7件、提言8件の計34件で、法令違反により排除・撤回が必要な広告・表示に出される警告の多くは、健康食品や化粧品の通販広告だった。

(原田英美  ライター / 2011年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「日本広告審査機構」の意味・わかりやすい解説

日本広告審査機構
にほんこうこくしんさきこう

略称 JARO (Japan Advertising Review Organization) 。広告関連業界全体の自主規制のセンター。 1974年 10月,消費者運動の高まりなどに伴い,広告への批判や苦情も活発になったので,企業と広告への信頼を高めることを目的として設立された。広告主,マス・メディア,広告代理業などが会員で,広告,表示に関する問合せの受付,企業,関係官庁,消費者団体などとの連絡,調整といった業務を行い,社会経済のなかの広告活動の健全な発達を目指している。

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百科事典マイペディア 「日本広告審査機構」の意味・わかりやすい解説

日本広告審査機構【にほんこうこくしんさきこう】

1974年に設立された広告の自主規制機関。略称JARO。広告主,媒体,広告代理店を主要メンバーとする審査機関。誇大広告をはじめとしてすべての広告に対する苦情処理を行い,広告に非があると判断した場合には広告主に対して広告の訂正・中止を求め,従わない時には広告媒体に掲載差止措置ができる。

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流通用語辞典 「日本広告審査機構」の解説

日本広告審査機構

わが国の広告・表示についての民間の自主規制団体。英語名のJapan Advertising Review Organizationの頭文字をとってJARO、ジャロともいわれる。公正な広告活動の推進を通じて広告および表示の質的向上をはかり、事業活動の適正化ならびに消費者利益の保護を期し、社会・経済の健全な発展と国民生活の向上に参与することを目的に昭和49年(1974)に設立された。

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世界大百科事典(旧版)内の日本広告審査機構の言及

【広告】より

…これに対して,国も医薬品,化粧品,医療用器具などについては〈薬事法〉によって,効能その他に関する虚偽または誇大な記事の広告を禁じ,また,〈不当景品類及び不当表示防止法〉のなかで,商品一般について虚偽誇大な広告をすることを禁ずるなど,必要な法的規制を行っている。また,広告主,媒体企業,広告代理店の側でも,たとえば,全日本広告連盟倫理綱領を作成して,〈広告はすべて社会道義や関係法規にもとづき,一般大衆に福祉と便益を与えるものでなければならない〉ほか7項目を定めて自主規制を行い,また,自主規制の実効をあげるために,日本広告審査機構(JARO)を設立している。アメリカでは古くからBBB(Better Business Bureau)がJAROのような事業を遂行している。…

※「日本広告審査機構」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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