日陰者ジュード(読み)ひかげものじゅーど(英語表記)Jude the Obscure

日本大百科全書(ニッポニカ) 「日陰者ジュード」の意味・わかりやすい解説

日陰者ジュード
ひかげものじゅーど
Jude the Obscure

イギリスの作家T・ハーディ長編小説。1895年刊。学問にあこがれる貧しい石工ジュードは独学でクライストミンスター(オックスフォード)の大学入学を志すが拒否される。一方、肉欲の女アラベラに誘惑され、また反キリストの進歩的理想家の女教師シューと自由な共同生活を営むが惨めな失敗に終わる。シューは古い信仰と平凡な結婚生活に戻り、ジュードはクライストミンスターの下宿で孤独に息を引き取る。グロテスクな挿話を織り込んで近代人の悲惨を描き、発行当時は道徳的非難の的となったが、のちに20世紀文学を予見する作品として再評価されている。

[海老根宏]

『大沢衛訳『日蔭者ヂュード』全3冊(岩波文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「日陰者ジュード」の意味・わかりやすい解説

日陰者ジュード
ひかげものジュード
Jude the Obscure

イギリスの詩人小説家 T.ハーディの小説。 1895年刊。不遇の境涯から身を起して学問を志す若者が,自制できない肉欲の誘惑や周囲の事情に翻弄されてついに挫折するにいたる,霊と肉の相克を描いた自然主義的小説。『ダーバービル家のテス』に続くこの作品に認められる反結婚的自由恋愛の思想について世間の非難が高まったため,ハーディは以後小説の執筆をやめ,詩作に転じた。

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