日高山脈(読み)ヒダカサンミャク

デジタル大辞泉 「日高山脈」の意味・読み・例文・類語

ひだか‐さんみゃく【日高山脈】

北海道中南部を南北に走る山脈。狩勝かりかち峠辺りから襟裳えりもに至る。最高峰は幌尻ぽろしりで標高2053メートル。カールが発達している。

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精選版 日本国語大辞典 「日高山脈」の意味・読み・例文・類語

ひだか‐さんみゃく【日高山脈】

北海道中南部を南北に走る山脈。北は佐幌岳(一〇五九メートル)から南は襟裳岬に至る。幌尻岳(二〇五二メートル)を主峰に標高一〇〇〇~二〇〇〇メートルの山々が連なる。氷食によるカールをもつ山が多く、東側の斜面は急峻である。

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日本歴史地名大系 「日高山脈」の解説

日高山脈
ひだかさんみやく

北海道中央南部にあり、北海道の脊梁南部を占める山脈。地帯構造からは蝦夷―サハリン系の隆起軸にあって、大雪火山山系から南で東北海道と中央北海道を分ける範囲であるが、通常、十勝地方と日高地方の境界を分ける山脈をいう。北の狩勝かりかち(南富良野町・新得町境)から南南東方向にやや西に弧を描きながら南の襟裳えりも(えりも町)まで南北約一四〇キロ、東西約三〇キロに及び、わが国有数の山脈。山脈北部は狩振かりふり岳など標高一〇〇〇メートル級の山々になるが、中部で高くなり、芽室めむろ(一七五三・七メートル)ピパイロ岳(一九一六・五メートル)戸蔦別とつたべつ(一九五九メートル)、最高峰幌尻ぽろしり(二〇五二・四メートル)エサオマントッタベツ岳(一九〇二メートル)カムイエクウチカウシ山(一九七九・四メートル)が連なり、やや高度を減じてコイカクシュサツナイ岳(一七一九メートル)ペテガリ岳(一七三六・二メートル)神威かむい(一六〇〇・五メートル)など一五〇〇―二〇〇〇メートル級の主峰群が連なる。幌尻岳は非火山では道内最高峰。南部は野塚のづか(一三五三・二メートル)、日高十勝岳(一四五七・二メートル)楽古らつこ(一四七一・九メートル)広尾ひろお(一二三一メートル)豊似とよに(一一〇五メートル)としだいに高度を減じ、襟裳岬背後に発達する海岸段丘群に至る。岬からは二キロほど岩礁が続き太平洋に没するが、沖合約四〇キロ海底の襟裳堆までなお山脈の延長をみる。山容は道内では例のない険しい満壮年期の形態で、南北の主稜線、各ピークから東西に下る支稜は切立ち、稜線の間を深くV字谷が刻み、鋸歯を立てた形態の幌尻岳、三角錐状のペテガリ岳など鋭いピークが連なり、主稜までのアプローチも長く日高アルプスともよばれる。

山脈の形成要因は、以前は地向斜造山論に基づき、中生代ジュラ紀、白亜紀の地向斜海盆の厚い海底堆積物に地下深くから深成岩が貫入、地向斜堆積物を変質させながら西へ衝上して日高帯を形成した日高造山運動とされた。

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改訂新版 世界大百科事典 「日高山脈」の意味・わかりやすい解説

日高山脈 (ひだかさんみゃく)

北海道中央部の山脈。北の狩勝(かりかち)峠(644m)から南端の襟裳(えりも)岬まで,南北約150kmにわたって連なり,北海道を東西に分け,十勝支庁日高支庁の境界をなす。東西の幅は約50kmで,南にいくほど狭く,主稜線からの山脈の幅は西の日高側で広く,東の十勝側で狭い。東側は断層崖の急斜面で,北半を流れる札内川,戸蔦別(とつたべつ)川などは谷口に広大な扇状地を形成して十勝平野で十勝川に合流し,南半を流れる川は直接海に注ぐ。このため,十勝平野からみると日高山脈は屛風を立てたように連なって見える。これに対し西側は数段の階段断層をなして海岸近くまで達する緩斜面で,沙流(さる)川,新冠(にいかつぷ)川などが谷をつくり,海岸段丘を切って海に注ぐ。

 日高山脈北部は最高峰の幌尻岳(2053m)のほか,ピパイロ岳(1917m),戸蔦別岳(1959m)などを含み,最も標高が高く,氷期につくられたカールなどの氷河地形が広く分布し,高山的な山容を呈する。しかし芽室(めむろ)岳(1754m)以北では急速に高度が下がり,山容もおだやかとなって,日勝(につしよう)峠,狩勝峠に至っている。中部はエサオマントッタベツ岳(1902m),札内(さつない)岳(1896m)から南に連なり,カムイエクウチカウシ山(1980m)を主峰とし,コイカクシュサツナイ岳(1721m),ヤオロマップ岳(1794m)などを経てペテガリ岳(1736m)へ至る。深い谷が両側に連なり,稜線はやせて急峻な山地をなす。カール地形は主として脊梁の東側にみられる。南部は中ノ岳(1519m)以南で,ピリカヌプリ(1631m)を主峰とし,ソエマツ岳(1618m),神威(かむい)岳(1601m)を除くといずれも1500m以下の山からなる。明瞭なカール地形はトヨニ岳(1493m)以南ではみられなくなり,さらに十勝岳(1457m)や楽古(らつこ)岳(1472m)を経て襟裳岬に至っている。標高は低いが山地は急峻である。

 日高山脈は中生代後期から第三紀にかけての日高造山運動でできた山脈で,脊梁部には日高変成岩が帯状に分布し,その両側にはジュラ系~白亜系の日高層群が広く露出する。森林限界はカール底付近(北部で標高1500m,南部で1600m)にあり,それ以下はエゾマツトドマツなどの密な針葉樹林からなっている。登山者も少なく登山道もないため,沢登りによってしか山頂に到達できない山も多い。種々の高山植物や,ヒグマ,ナキウサギなどの動物がみられるが,山脈西部の新冠川の新冠ダム,静内川の高見ダムの建設や森林伐採のための著しい林道開発によって,日高山脈の原始性は破壊される危険にさらされている。1981年山脈一帯は日高山脈襟裳国定公園に指定され,開発が規制されている。現在,山脈を横断する交通路としては根室本線と国道38号線が狩勝峠を越えるほか,北部の日勝峠を越える国道274号線と南端の襟裳岬を回る国道336号線がある。
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百科事典マイペディア 「日高山脈」の意味・わかりやすい解説

日高山脈【ひだかさんみゃく】

北海道中南部,狩勝峠から襟裳(えりも)岬に至る南北約150kmの山脈で,日高・十勝地域の境界をなす。東の十勝平野とは標高約400mの山麓線で,西の夕張山地とは鵡川(むかわ)で限られ,芽室岳(1754m),幌尻岳(ぽろしりだけ),ペテガリ岳,神威(かむい)岳(1600m)などがそびえ,1500m以上に氷河地形がみられ,圏谷(カール)群がある。日高造山運動により形成され,中軸は白亜紀日高層群,西は神威古潭(こたん)層群と蛇紋岩,東は斑レイ岩と日高層群などからなる。1981年国定公園指定。
→関連項目浦河[町]様似[町]沙流川清水[町]大樹[町]十勝川[温泉]日高山脈襟裳国定公園氷河遺跡広尾[町]北海道芽室[町]

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「日高山脈」の意味・わかりやすい解説

日高山脈
ひだかさんみゃく

北海道の脊梁(せきりょう)山地の南部を構成する高峻(こうしゅん)な山脈。北は佐幌岳(さほろだけ)(1059メートル)から南は襟裳岬(えりもみさき)に至り、延長150キロメートル余。主分水嶺(ぶんすいれい)は東に偏り、東側は十勝(とかち)平野に急傾斜し、平野と接する所には広大な高位扇状地面が展開して雄大な景観をみせる。西側は緩傾斜面で、一部階段状をなして太平洋岸の段丘に終わり、同山脈の奥深さを感じさせる。主峰幌尻岳(ぽろしりだけ)(2052メートル)をはじめ、2000~1500メートルの山嶺が連なり、頂上付近に氷食によるカール(圏谷)をもつものが多い。とくに戸蔦別岳(とつたべつだけ)(1959メートル)のカールでは二段のモレーン(氷堆石(たいせき))があり、日高山脈に二度の氷期があったことを示す。中軸部には混成岩、変成岩、深成岩からなる日高変成帯が山陵に沿い、その西に白亜紀層があり日高層群とよばれる。これが隆起し変成作用を受けて形成された。

 日高山脈は北海道の東西交通の大きな障害となっているが、古くからの狩勝峠(かりかちとうげ)(644メートル)のほか、第二次世界大戦後は日勝峠(にっしょうとうげ)(1023メートル)が利用され、南の襟裳岬経由とともに3本の国道が開かれ、JRの根室(ねむろ)本線と石勝(せきしょう)線は新狩勝トンネルで結ばれる。専門家以外の登山はあまり行われないが、一部は日高山脈襟裳国定公園に指定されている。

[柏村一郎]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「日高山脈」の意味・わかりやすい解説

日高山脈
ひだかさんみゃく

北海道中央南部を占める南北方向の山地。狩勝峠から襟裳岬まで約 140kmにわたり,北方の北見山地とともに北海道の背骨部を構成する。主峰幌尻岳(2052m)をはじめ,芽室岳(1754m),戸蔦別岳(1959m),ペテガリ岳(1736m),神威岳(1600m),楽古岳(1472m)など 1400~2000mの高山が連続して,東西交通の障害をなす。山地は開析が進んで壮年期のけわしい山容を現し,戸蔦別岳,幌尻岳,ペテガリ岳の頂上付近には,更新世の氷河期に形成された圏谷(カール)が分布する。山脈の東側は十勝平野に向かって急傾斜し,山麓に複合扇状地が発達するが,西側は緩傾斜して傾動地塊を形成。古生代の日高層群(おもに粘板岩,砂岩)からなり,その中心部は幅 10~30kmにわたって地質構造の複雑な日高変成帯をなす。狩勝峠,日勝峠により道央,道東が結ばれる。

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