旧刑法(読み)きゅうけいほう

精選版 日本国語大辞典 「旧刑法」の意味・読み・例文・類語

きゅう‐けいほう キウケイハフ【旧刑法】

〘名〙 明治一三年(一八八〇)に公布された刑法典を、現行刑法に対していう。ナポレオン刑法典を基本として、ボアソナード起草したもの。同一五年一月から施行。同四一年に廃止された。

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デジタル大辞泉 「旧刑法」の意味・読み・例文・類語

きゅう‐けいほう〔キウケイハフ〕【旧刑法】

明治13年(1880)7月17日太政官布告三六号で公布され、同15年1月1日から施行された刑法典。フランス刑法の影響が強い。同41年10月1日、現行刑法の施行により廃止。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「旧刑法」の意味・わかりやすい解説

旧刑法
きゅうけいほう

1880年(明治13)7月17日太政官(だじょうかん)布告第36号により発布された日本の刑法典。1882年1月1日に施行されてから、現行刑法が施行される1908年(明治41)1月1日まで、26年間効力を有した。それ以前の新律綱領改定律例が中国の律令系に属し、前近代的なものであったため、時の明治政府は、1873年(明治6)これを近代化・西欧化すべくフランスの法学者ボアソナードを招聘(しょうへい)し、新しい刑法典の起草を命じた。1877年に完成したボアソナード刑法草案を土台として、江藤新平箕作麟祥(みつくりりんしょう)らの努力により成立したのが旧刑法である。このような経緯を反映して、フランス刑法、とくに1810年のナポレオン刑法典の強い影響がみられ、第2条に罪刑法定主義の原則を規定するほか、犯罪を重罪・軽罪・違警罪に3分類したうえで、それぞれに対応した刑罰(主刑)として、現行刑法とほぼ同様の刑罰を採用している(ただ、重罪に対して徒刑流刑などを残している点では前近代的な性格がみられる)。

[名和鐵郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「旧刑法」の意味・わかりやすい解説

旧刑法
きゅうけいほう

明治 13年太政官布告 36号。 1882年1月1日施行の刑法典。逐条主義の体裁をとり,全4編 430条より成る。早期の条約改正を目的の一つとする法典近代化のもとで,1875年司法省において編纂作業が開始された。その後御雇外国人 G.ボアソナード (フランス人) および鶴田皓を中心とする刑法草案取調掛との間でボアソナード起草の草案をもとに意見交換が繰返され,その結果司法省草案が完成し太政官への上呈となった。さらに同草案について刑法草案審査局や元老院での審議・修正が行われ,最終的には 80年7月 17日公布された。本法は罪刑法定主義の明示,刑法不遡及の原則の採用,正当防衛,時効制度の明文化等,それまでの律令法系の刑法と内容を大きく異にし,先進諸外国,特にフランス刑法典の影響を強く受けたものである。 1908年における現行刑法施行まで行われた。

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世界大百科事典(旧版)内の旧刑法の言及

【刑法】より

… 日本では,明治維新後,1868年(明治1)に仮刑律が制定され,続いて新律綱領(1870),改定律例(1873)が制定されたが,これらは,中国法系の律の影響を強くうけたものであった。日本の刑法が近代化するのは,82年に施行された旧刑法によってである。旧刑法は,司法省の顧問として招聘(しようへい)したフランスの法律学者ボアソナードの起草した日本刑法草案(1877)を土台として,刑法草案審査局で審査修正し,元老院の審議を経て公布された法典であった。…

※「旧刑法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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