晴・霽(読み)はれ

精選版 日本国語大辞典 「晴・霽」の意味・読み・例文・類語

はれ【晴・霽】

〘名〙 (動詞「はれる(晴)」の連用形の名詞化)
① 晴れること。空の晴れること。雲や霧などがなくなること。また、雨や雪があがること。気象用語としては、雲量二以上八以下の場合をいう。
※菅家文草(900頃)二・早春、侍宴仁寿殿、同賦春暖「虹霓細舞因晴見、沆瀣流盃向晩多」
※魔風恋風(1903)〈小杉天外〉後「何だか晴天(ハレ)に近付いた様な気がする」
② 晴れたところ。日の当たるところ。日なた。
今昔(1120頃か)一〇「晴に出でて蔭を離れむと走る時には」
③ さえぎるものがなく広々とした所。また、晴れやかな所。人なか。公衆の面前。転じて、正式の場所。公の席。
源氏(1001‐14頃)須磨「居給へるさま、さるはれにいでて、いふよしなく見え給ふ」
④ (形動) まばゆいばかりであること。晴れがましいこと。表立ってはなやかなこと。転じて、正式なこと。よそいきなこと。また、そのさま。おおやけ表向き
※栄花(1028‐92頃)もとのしづく「かかりけるはれのことに、さるべき用意あるべかりけるものを」
咄本・軽口大黒柱(1773)二「はれな座敷へ行くとて」
⑤ 晴れの着物。晴れ着。また、それを着た姿、様子。晴れ姿。
※浄瑠璃・堀川波皷(1707)下「祭に行く今日のはれ。月代剃らせに行ったれば」
⑥ 疑いのはれること。また、嫌疑を晴らすこと。
梅津政景日記‐寛永八年(1631)二月一八日「我等盗人に罷成、此はれを不仕候得ば、所に居候事不罷成候間」

はら・す【晴・霽】

〘他サ五(四)〙
① 空が晴れるようにする。
※虎明本狂言・祐善(室町末‐近世初)「是なるやどりにたちより、雨をはらさばやと思ひ候」
気持や顔の表情を明るくする。晴れ晴れとさせる。〔日葡辞書(1603‐04)〕
※雁(1911‐13)〈森鴎外〉八「気を晴(ハラ)さうと思って、外へ出た」
無実であることを証明して、人からかけられた嫌疑を除く。
明暗(1916)〈夏目漱石〉四七「その疑念を晴(ハ)らして呉れる唯一の責任者が」
④ 自分の心の中にあって心を暗くしているものをなくす。解消する。
※日葡辞書(1603‐04)「ウラミヲ farasu(ハラス)
⑤ 遂げる。目的を遂げる。
義経記(室町中か)三「宿願をはらさせ給はん為に」

は・れる【晴・霽】

〘自ラ下一〙 は・る 〘自ラ下二〙
① 雲や霧が消え去ってなくなる。雨・雪などがやむ。天気がよくなる。晴天になる。
万葉(8C後)八・一五六九「雨(はれ)て清く照りたるこの月夜またさらにして雲な棚引き」
憂いがなくなって、さっぱりとする。心の中のわだかまりや悩みごとが解けさる。心の中がさわやかになる。
※古今(905‐914)離別・三八六「秋ぎりのともにたちいでてわかれなばはれぬおもひに恋ひやわたらん〈平元規〉」
③ 罪や疑いなどが解ける。青天白日の身となる。
※名語記(1275)三「錯乱のうたがひは、はれがたきもの也」
④ 展望が開ける。見はらしがきく。広々としている。
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「前一町ばかりのほどはあきらかにはれて」

はる・く【晴・霽】

[1] 〘自カ四〙 ふさいでいた心がはれる。
※蜻蛉(974頃)中「手足もひたしたれば、ここち、物思ひはるけるやうにぞおぼゆる」
[2] 〘他カ四〙 (開) ひらく。はらす。はらく。
[3] 〘他カ下二〙
① 心の迷いや嫌疑などが晴れるようにする。晴らす。
※兼輔集(933頃)「いつとてもはるくる事もなき身にはさびぞまさらんとけん物かは」
② 払い除く。取りのける。
※源氏(1001‐14頃)総角「ここかしこかき払ひ、岩がくれに積れる紅葉の朽葉、すこしはるけ」
[補注](一)の挙例「蜻蛉」については、(三)の連体形「はるくる」の誤写説がある。

はるか・す【晴・霽】

〘他サ四〙 晴れるようにする。はらす。
※伊勢物語(10C前)九五「いかで物越しに対面して、おぼつかなく思ひつめたること、すこしはるかさん」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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