暖・温(読み)あったかい

精選版 日本国語大辞典 「暖・温」の意味・読み・例文・類語

あったか・い【暖・温】

〘形口〙 あったか・し 〘形ク〙 (「あたたかい(暖)」の変化した語)
滑稽本浮世風呂(1809‐13)四「雪は〈略〉、降る間(うち)は暖(アッタカ)いネ」
※雑俳・柳多留‐七八(1823)「あったかい隠居懐炉も小判形
知恵が足りない。うす馬鹿だ。おめでたい
※青べか物語(1960)〈山本周五郎〉留さんと女「留さんが少し頭のあったかいことや」
⑤ 男女の仲がよいさまである。熱い。
※生まざりしならば(1923)〈正宗白鳥〉「いやなことだね。お温(アッタ)かい所を見せつけられて」
あったか‐げ
〘形動〙
あったか‐さ
〘名〙
あったか‐み
〘名〙

あたたか・い【暖・温】

〘形口〙 あたたか・し 〘形ク〙
① 体に適度な温度が加わって心地よい。
(イ) 寒くもなく、暑すぎもせず、気持がよい。気候外気の温度が程よい。《季・春》
俳諧・続寒菊(1780)「そこらをかける雉子(きじ)の勢ひ 暖うなりてもあけぬ北の窓〈野坡〉」
(ロ) 体の一部で感じる物の温度が、熱すぎず冷たくもなく、快い程度に高い。「温かい御飯」
金銭が十分に、豊かにあるさま。
咄本・軽口御前男(1703)三「『いつ見ても内があたたかさふな』といはるれば、下人いふやう『成ほどあたたかい』」
③ 思いやりや理解がこもっている。
野分(1907)〈夏目漱石〉二「暖(アタタ)かい家庭に育った」
あたたか‐げ
〘形動〙
あたたか‐さ
〘名〙
あたたか‐み
〘名〙

あたた・める【暖・温】

〘他マ下一〙 あたた・む 〘他マ下二〙
① 熱を加えて、温度を高くする。あたたかくする。あっためる。
書紀(720)天武元年六月「乃ち三重郡家に到りて、屋一間(ひとつ)を焚きて、寒き者を熅(アタタメ)令む」
平家(13C前)六「酒あたためてたべける薪にこそしてんげれ」
② 今までとぎれていた交際を再開する。
夜明け前(1932‐35)〈島崎藤村〉第二部「知人の家々を訪ねて旧交を温めただけ」
③ 他人の物を、人に知られないようにこっそり自分の物にしてしまう。
④ 考えや文書を、推敲(すいこう)、調査などのためにしばらくそのままにしておく。未処理のままとっておく。
※Wee(1924)〈細田源吉〉「毎日胸の中であたためてゐた思ひだけは、そのまま蔵(しま)っておいた」

あたたまり【暖・温】

〘名〙 (動詞「あたたまる(暖)」の連用形の名詞化)
① あたたまること。また、そのような気。ぬくもり。暖気。
※史記抄(1477)一四「熨斗に湯を入たり、火を入たりなんどして、其あたたまりを以て、針線の縫のあとを失わうとてするぞ」
※浮世草子・傾城色三味線(1701)江戸「そのよい返事のあたたまりのさめぬうちに」
② ある人がその死後に及ぼす影響。
※甲陽軍鑑(17C初)品五二「義理深き剛の心有は、偏に信玄公の御威光強くまします御あたたまりにて」

あたたま・る【暖・温】

〘自ラ五(四)〙
① 熱を帯びる。あたたかくなる。
※千里集(894)「あくまでにみてる酒にぞ寒き夜は人の身までにあたたまりける」
※大鏡(12C前)六「こよなくあたたまりて、さむさもわすれ侍にき」
② (ふところがあたたかくなるの意から) 物や金銭が豊かになる。また、他動詞的に用いて、金品などを手に入れる。
※浄瑠璃・堀川波鼓(1706頃か)下「わしら迄つらりっと三百宛あたたまった」

あったま・る【暖・温】

〘自ラ五(四)〙 (「あたたまる(暖)」の変化した語)
※洒落本・福神粋語録(1786)廻り座敷「おらァもふせっかくあったまってゐるに、をきることはごめんだ」
※洒落本・契情買虎之巻(1778)五「コレあったまるやうにもらいやうもしってゐるが、それもばらだ」

あたた‐け・し【暖・温】

〘形ク〙 暖かい。暖かそうである。《季・春》
※千里集(894)「あたたけき春の山べに花のみぞ所もわかず咲きわたりける」

あたた・む【暖・温】

〘他マ下二〙 ⇒あたためる(暖・温)

あたたか・し【暖・温】

〘形ク〙 ⇒あたたかい(暖)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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