曲・枉(読み)まげる

精選版 日本国語大辞典 「曲・枉」の意味・読み・例文・類語

ま・げる【曲・枉】

〘他ガ下一〙 ま・ぐ 〘他ガ下二〙
棒状のものなど、物の形を屈曲した状態にする。たわめる。おりまげる。
書紀(720)神功摂政前(北野本訓)「是に、皇后(きさいのみや)、針(はり)を勾(マケ)て鉤(ち)を為(つく)り」
※宇津保(970‐999頃)国譲中「糸を輪にまけて、組みて沈の朸(あふご)につけたり」
② 傾ける。ななめにする。また、方向を変改する。「貸家の札をまげてはる」「首を横にまげる」
※滑稽本・七偏人(1857‐63)初「ヱヱそれ傾(マゲ)てもつと飜(こぼ)れるは」
③ (「が(駕)を枉(ま)ぐ」から) わざわざ向こうから訪れる。
※書紀(720)顕宗元年二月(図書寮本訓)「幼年に在りて、亡逃(に)げて自ら匿れたり。猥(マケ)て求め迎へられて」
道理事実、決意、本心我執などを改め変えたり、ゆがめたり、おさえつけたりする。
(イ) 無理にこじつけてゆがめる。理を非にする。理をねじまげてよこしまなことをする。
※大唐三蔵玄奘法師表啓平安初期点(850頃)「玄藻を紆(マケ)て宗極を序明したまへ」
(ロ) 気持や性質をゆがめさせる。また、気を損ずる。
源氏(1001‐14頃)桐壺「世に、いささかも人の心をまけたることはあらじと思ふを」
(ハ) 意志願望を押えつける。また、自分の気持をおさえて外に出さなくする。
落窪(10C後)三「母具したる物は、まづこれにといふままに、まげられて」
(ニ) 改変する。改竄する。
小説神髄(1885‐86)〈坪内逍遙〉上「ひたすら情を写さむとて事実を枉(マグ)ることも多かるべし」
⑤ (「質」に通じる「七」の字は下部を曲げるところからいう) 質入れする。
評判記・色道大鏡(1678)一「まぐる 何によらず、質にをくことをいふ」
⑥ (「人差指を曲げる」意で) くすねる。ちょろまかす。盗む。
浄瑠璃仮名手本忠臣蔵(1748)四「判官所持道具、俄浪人(にはからうにん)にまげられなと」

まげ【曲・枉】

〘名〙 (動詞「まげる(曲)」の連用形名詞化)
物体に外力を加えたときに湾曲する現象。
② 品物を質入れすること。
※雑俳・川柳評万句合‐明和四(1767)天二「隠居どら唐津なんどをまげに遣り」
③ 竹や木を曲げてつくったかんじき。《季・冬》
④ 「まげもの(曲物)」の略。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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