更衣(こうい)(読み)こうい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「更衣(こうい)」の意味・わかりやすい解説

更衣(こうい)
こうい

天皇の侍妾(じしょう)で女御(にょうご)の下に位置する。本来は後宮での職掌を有し、その名称から天皇の更衣ころもがえ)をつかさどったと推定されるが、『西宮記(さいぐうき)』所引の『蔵人式(くろうどしき)』や『北山抄』などによれば、殿上で采女(うねめ)・女蔵人などを率いて天皇の朝膳(あさのおもの)などに奉仕し、また「内宴」のときの陪膳(ばいぜん)を勤めるなどのことがみえ、『西宮記』所引の『清涼記』(村上(むらかみ)天皇撰(せん))には員数12人としている。天皇の侍妾としての更衣は、おそらくこれらの実務には関与しなかったであろう。令制(りょうせい)にはなく、桓武(かんむ)朝の初見を伝えるが、国史等の確実な史料では嵯峨(さが)朝以後で、冷泉(れいぜい)朝以降は例をみない。皇子女を産むと御息所(みやすどころ)と称した。更衣より女御に進む例もあり、また東宮更衣の例もみえる。

[黒板伸夫]

『須田春子著『平安時代後宮及び女司の研究』(1982・千代田書房)』『角田文衛著『日本の後宮』(1973・学燈社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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