基本情報
軌道半長径=5.2026天文単位
離心率=0.0485
軌道傾斜=1°.303
太陽からの距離 最小=7.406×108km 平均=7.783×108km 最大=8.160×108km
公転周期=11.862年
平均軌道速度=13.06km/s
会合周期=398.9日
赤道半径=7万1492km
体積=1321(地球=1)
質量=317.831(地球=1)
平均密度=1.33g/cm3
自転周期=0.4135日
赤道傾斜角=3°.07
アルベド=0.52
平均極大光度=-2.8等
赤道重力=2.37(地球=1)
脱出速度=59.53km/s
太陽系の第5惑星で,最大の惑星でもある。表面には縞模様と呼ばれる赤道と平行した赤褐色の模様が見られる。南緯20°のあたりに,東西約3万5000km,南北約1万5000kmに及ぶ大赤斑と呼ばれる楕円形の模様があり消長を繰り返している。
1973年12月に惑星探査機パイオニア10号が表面から12万9000km,74年12月にはパイオニア11号が4万1000kmまで接近して初めて近接観測に成功したが,79年3月と7月にはボエジャー1号と2号がそれぞれ27万8000kmと64万kmまで接近して一段とくわしい観測を行い,これによって木星とその衛星のなぞのかなりの部分が解明された。95年12月は探査機ガリレオがプローブを大気中に降下させたほか,周回軌道から観測を続けている。
長年の模様観測から,赤道域の自転周期として9時間50分30.003秒,中緯度の自転周期として9時間55分40.632秒という値が求められた。これをそれぞれシステムⅠ,Ⅱと称する。一方,電波観測から固体核の自転周期と考えられる9時間55分29.37秒という値が求められ,これをシステムⅢと称する。システムⅡとⅢはほぼ等しいが,システムⅠが5分も短いのは赤道域に100m/sを超える偏西風が吹いていて,これによって運ばれる雲の模様から求められたものだからと考えられている。多くの模様は独自の自転周期をもっており,大赤斑はシステムⅡに対し,年に平均29°も移動し,さらに平均位置の東西に発見以来±500°も動き回っている。大赤斑と同じ緯度に出現する南熱帯かく乱は大赤斑より短い自転周期をもち,しばしば大赤斑の下をくぐりぬけて追い越していく。
赤外線観測によれば,表面雲層付近の温度は-139℃で,雲の成分は上層では固体アンモニア,下層では硫化水素アンモニウムNH4SHと水(氷)と考えられている。固体アンモニアの雲の層の大気圧は0.6atm程度である。雲は上層気流の部分に生じ,これが明るい帯となって木星をとりまき,逆に下降気流の部分が赤褐色の縞模様となって見える。帯は縞より4度ほど高温であるが,縞でも雲が晴れて透明な部分(青っぽく見える)は下層の高温部が観測にかかる。高度による温度傾斜は断熱逓減率より少し小さい-1.9°/cm程度である。大気は水素(89%),ヘリウム(11%)を主成分とし,メタン,アンモニア,アセチレン,エタンなどが全体で0.1%ほど含まれている。厚さは約1000kmあり,底では温度約1500K,圧力約30atmに達している。その下は高圧の液体水素の層があり,底の温度は1万1000K,圧力300万atmである。さらにその下は高温高圧のため自由電子を含んで電導性を生じた厚い金属水素の層があり,中心部は固体核があると考えられている。中心の温度は約3万K,圧力は1億atmに達する。木星は太陽から受けたエネルギーの約2倍の熱量を放出している。余分の熱量は主として木星の収縮による重力エネルギーによっておぎなわれていると考えられ,それには木星の半径が年に1mmずつ減少すればよい。
強大な重力と速い自転のため木星の大気活動はきわめて活発である。縞模様は大気の大循環によって生じているが,縞の本数が多いのは大きなコリオリ力の結果である。台風に相当する渦が各所に発生し,その寿命もきわめて長い。渦の最大のものは大赤斑で,消長はあるが,すでに300年も観測されている。内部の風速は55m/sに達し6日間で反時計方向に回転している。縞模様の色は窒素,リン,硫黄を含んだ化合物によって生じていると考えられ,地上実験でも放電によって赤っぽい化合物が容易に合成されることがわかっている。
大気圏の上層は厚さ3000cmの電離圏となっている。電離層は数層あり,プラズマ温度は数百Kに達している。イオンは地球と違ってH⁺がほとんどで,ほかにH2⁺,H3⁺,CH3⁺なども存在する。
木星の磁気圏はきわめて強力でその勢力範囲は8×106~11×106kmに達している。表面での磁場は赤道で4~7ガウス,極で10~14ガウス,磁極の向きは自転軸に対し9°傾いている。地球の500倍もの強度をもつ放射能帯には数MeV以上の電子,1MeV程度の陽子が存在し,強力な電波を放出している。惑星電波が最初に発見されたのは木星で1955年のことである。この電波は波長十数m程度のデカメートル波で,木星の磁極付近から出ている。磁気圏から出る電波は波長の短いマイクロ波で,地上観測から木星の磁気圏の状態を知る手がかりとなった。一方,惑星探査機は直接磁気圏の中からその状態を探り,磁場の赤道にそって遠方まで電流が流れており,磁気圏を遠くにひろげる役割を果たしていることをつきとめた。
木星は多くの衛星をもっている。昔から知られているものは木星に近い順に,Ⅴアマルテア,Ⅰイオ,Ⅱユーロパ,Ⅲガニメデ,Ⅳカリスト,ⅩⅢレダ,Ⅵヒマリア,Ⅶエララ,Ⅹリシテア,ⅩⅡアナンケ,ⅩⅠカルメ,Ⅷパシファエ,Ⅸシノーペと呼ばれる。探査機によってさらにⅩⅥメティス,ⅩⅤアドラステア,ⅩⅣテーベが追加確認された(発見は地上)。このうちⅠ~ⅣはG.ガリレイが1610年に発見したのでガリレオ衛星と呼ばれる。その詳細については〈衛星〉の項目を参照されたい。Ⅷ,Ⅸ,ⅩⅠ,ⅩⅡは逆行衛星である。
ボエジャー1号は木星にも淡い環があることを発見した。主環の木星中心からの距離は12万2800~12万9200km,明るい部分の幅は800kmである。淡い第2環は主環の内側から木星表面までひろがっている。また,衛星イオの活火山から噴きあげられた硫黄やナトリウムはイオの軌道にひろがり,さらに内側に入っていって,アマルテアの表面を赤く染め,環をこえて木星表面にまで達している。
執筆者:田中 済
シンボリズム
木星は最大の惑星であり,ギリシア・ローマ神話の神々の王たるゼウス,ユピテル(英語のジュピター)と同一視された。錬金術ではスズのシンボル。占星術では大いなる幸福の惑星とみなされ,吉位にある場合は長寿と栄誉をもたらし,率直,博愛,賢明,正義の性質を授けるとされる。逆に凶位にある木星は,妄想,うぬぼれ,虚栄心の強い人間をつくる。人体の支配部位は,肺臓,肋骨,動脈,精子,肝臓で,多血質,卒中性の体質を生むとされる。
執筆者:有田 忠郎