木賊・砥草(読み)とくさ

精選版 日本国語大辞典 「木賊・砥草」の意味・読み・例文・類語

と‐くさ【木賊・砥草】

[1] 〘名〙
① シダ類トクサ科の常緑多年草。北海道、本州中部以北の渓流沿いの林下などに生え、また観賞用に庭園などで栽培される。地中を横に走る根茎から高さ五〇~一〇〇センチメートルの多数の地上茎を叢生する。地上茎は深緑色を帯び中空で径五ミリメートル内外になる。節間は二〇本程の稜と溝が交互して走る。葉は集まって長さ一センチメートル内外の鞘(さや)となり、黒みを帯びる。胞子嚢穂は長さ一センチメートルほどの楕円体で茎の先端に単生する。珪酸(けいさん)塩を多量に含み、著しく硬くざらつくので、木地、骨、爪などをみがくのに用いる。和名砥草は砥(と)の役をする草の意。あおとくさ。漢名、木賊。《季・秋》
平家(13C前)一「播磨よねはとくさか、むくの葉か、人のきらをみがくは」
※宇治拾遺(1221頃)一四「刑部録といふ庁官、びんひげに白髪まじりたるが、とくさの狩衣に青袴きたるが」
[2]
[一] 謡曲。四番目物。観世宝生・金剛・喜多流。作者不詳。都の僧が別れた父に会いたいという松若を連れて松若の故郷信濃国園原を訪れ、木賊を刈っている老人に宿を借りる。老人はかどわかされた子への悲しみを語り、形見衣装をまとって子が好んだ小歌曲舞(くせまい)をうたう。僧はこれが松若の父と気がついて、父子を再会させる。男物狂物(おとこものぐるいもの)の一つ。
[二] 狂言。「天正狂言本所収善光寺から帰った太郎冠者主人旅先での話を聞かれ、園原を通る人が木賊ですり消えたというでたらめの話をする。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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