本・元・基・下・許・素(読み)もと

精選版 日本国語大辞典 「本・元・基・下・許・素」の意味・読み・例文・類語

もと【本・元・基・下・許・素】

[1] (「すえ(末)」の対)
[一] 存在の基本となるところ。
草木の根。株。ねもと。立っているものの下部
古事記(712)下・歌謡「立ち栄(ざか)ゆる 葉広(はびろ)熊白檮(くまかし) 母登(モト)には い組竹生ひ 末(すゑ)へには たしみ竹生ひ」
※大鏡(12C前)五「高御座のみなみおもてのはしらのもとをけづりて候なり」
② 物のつけ根。
平家(13C前)九「薩摩守の右のかひなを、ひぢのもとよりふっときりおとす」
③ (枝葉に対して) 木の幹。草の茎。また、枝の幹に近いほうの部分。
※古事記(712)中・歌謡「みつみつし 久米の子らが 粟生には 臭韮(かみら)一本(ひともと) 其ねが母登(モト) 其根芽つなぎて」
④ 草木の生えぎわ。ねもとに近い地面。物の立っているまわりの地面や床。
万葉(8C後)一〇・二三一六「奈良山の峰なほ霧らふうべしこそ籬(まがき)の下(もと)の雪は消ずけれ」
調度や道具類などの手に持つところ。手もと。
※枕(10C終)八九「三重がさねの扇。五重はあまりあつくなりて、もとなどにくげなり」
居所。その人の身のまわり。その人の息のかかる範囲。→おもとおんもと
古今(905‐914)恋二・五八九・詞書「やよひ許に、もののたうびける人のもとに、また人まかりつつ」
⑦ そのものの近く。そのすぐそば。
※万葉(8C後)一六・三八一七「かるうすは田廬(たぶせ)の毛等(モト)に吾が背子はにふぶに笑みて立ちませり見ゆ」
⑧ 判断の基準。手本。標準。
蔭凉軒日録‐長祿三年(1459)一二月五日「普広院殿以勝定院殿御代本。即今御代以普広院殿御代本」
和歌上の句。本句。
※大和(947‐957頃)一五二「いはで思ふぞいふにまされると宣ひけり。〈略〉これをなむ、世の中の人、もとをばとかくつけける」
⑩ 神楽歌を奏するのに、神座に向かって左方の座席。また、そこにすわる奏者や、その受持ちの歌の部分。本方。
※神楽歌(9C後)採物・榊「〈本〉榊葉の香をかぐはしみ〈略〉〈末〉神籬御室の山の」
[二] 事物の発生するところ。
根元。根本。素地。みなもと。
源氏(1001‐14頃)乙女「ざえをもととしてこそ、大和魂の世に用ゐらるる方も強う侍らめ」
② 原因。たね。
書紀(720)神代上(兼方本訓)「今、世人(よのひと)、夜一片之火(ひとつひとほすこと)(い)み、又、夜、擲櫛を忌(い)む、此れ其の縁(ことのモト)なり」
即興詩人(1901)〈森鴎外訳〉心疾身病「おそるおそるその不興の因果(モト)を問ひしに」
③ 利を生むもの。資本。資金。もとで。元金原価。「もとをとる」「もとも子もない」
※霊異記(810‐824)下「銭一倍にして、僅に本(もと)の銭を償ひ、未だ利の銭を償はず」
④ (酒造では国字「酛」を用いる) 原料。特に、日本酒をかもすもとになるもの。酒母。
※日葡辞書(1603‐04)「サケノ moto(モト)
[三] その影響や支配を受ける範囲。
※青年(1910‐11)〈森鴎外〉二一「稲妻のやうに早い、鋭い一瞥の下(モト)に、二人の容貌、態度、性格をまで見たかと思はれる位であった」
※自由と規律(1949)〈池田潔〉その制度「現代のイギリスのパブリック・スクールは、如何なる制度のもとに運営されているのであろうか」
[2] 〘接尾〙 立っている長いものを数えるのに用いる語。
① 草木を数えるのに用いる。
※古事記(712)中・歌謡「粟生(あはふ)には 臭韮(かみら)(ひと)母登(モト)
② 塔や堂などの高い建築物、厨子、台、高盤、机、胡床、柱、幡など、細長く、立てて使う道具類などを数えるのに用いる。
③ 鷹狩に使う鷹を数えるのに用いる。
※幸若・夜討曾我(室町末‐近世初)「惣して鷹は五拾もと、犬は八拾四疋」
[3] 〘語素〙 主として(一)(一)の意味で、立っているものの下部、根のまわり、物の近く、根拠地などを示す。「国もと」「そこもと」「足もと」「手もと」「ねもと」「ひざもと」「枕もと」など。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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