杉・椙(読み)すぎ

精選版 日本国語大辞典 「杉・椙」の意味・読み・例文・類語

すぎ【杉・椙】

〘名〙
スギ科の常緑高木。日本特産で、秋田、吉野、屋久島などが有名な産地。高さ五〇メートル、径五メートルに達するものもある。樹冠は楕円状円錐形。樹皮は赤褐色で縦に長く裂ける。葉は小さな針状でやや湾曲し小枝にらせん状に密生。雌雄同株。早春、単性花をつける。雄花は黄褐色で米粒形、雌花は濃緑色で球形、数個が穂状につく。果実は木質で径一・五~二センチメートルの卵球形。種鱗と包鱗はなかば癒着し、種鱗の先はあらい歯牙(しが)状で基部に二~五個の種子がある。種子は翼をもち長楕円形。材は建築、器具など用途が広い。葉は線香を作り、樹皮で屋根を葺(ふ)く。えいざんすぎ、ほうおうすぎ、めじろすぎ、えんこうすぎなどの園芸品種がある。漢名は倭木で、「杉」はもともとはコウヨウザンの名。すぎのき。いそき。まき。
※古事記(712)上「亦其の身に蘿(こけ)と檜(ひ)(すぎ)と生(お)ひ」
古今(905‐914)雑下・九八二「わがいほはみわの山もとこひしくはとぶらひきませすぎたてるかど〈よみ人しらず〉」
② 「すぎなり(杉形)」の略。
源平盛衰記(14C前)三五「木曾十余騎騎馬の鼻を引き返し、杉のさきにさと立って宣(のたま)ひけるは」
③ 紋所の名。杉の木をかたどったもので、一本杉、三本杉、杉巴、三つ割杉、三つ追杉など、種類が多い。
[語誌]まっすぐに高く伸びる目立つ木なので、古くから神をまつる神聖な木とされた。和歌では、「三輪の祝(はふり)が忌(いは)ふ杉」 〔万葉‐七一二〕とあるほか、平安以後は、稲荷山・平野香椎祇園などの神木が詠まれている。特に、①の挙例の「古今」を三輪明神神詠とする伝承があり、三輪のスギをいうことが多い。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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