材木座(読み)ざいもくざ

精選版 日本国語大辞典 「材木座」の意味・読み・例文・類語

ざいもく‐ざ【材木座】

[1] 〘名〙
中世、営業特権を認められた材木商の仲間。中世初期に発生。興福寺一乗院に属する山城木津の三座、祇園社神人の京都堀川の座、鎌倉材木座などが有名であった。木屋座
大乗院寺社雑事記‐寛正六年(1465)六月一六日「木津材木座与筒井披官人材木売京上檜皮事相論」
② 江戸時代、①の後身にあたる材木の問屋をいう。
※人情本・春色梅児誉美(1832‐33)四「藤さんは千葉の材木座(ザイモクザ)で第一ばんの福有(ぶげん)人」
[2] 神奈川県鎌倉市の地名滑川(なめりがわ)東側の海岸にある。鎌倉時代に和賀江湊があり、材木の陸揚げが多かったところからの名。海水浴場として有名。

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デジタル大辞泉 「材木座」の意味・読み・例文・類語

ざいもく‐ざ【材木座】

中世、営業独占権を認められていた材木商の組合。京都堀川の座、鎌倉の材木座などが有名。

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改訂新版 世界大百科事典 「材木座」の意味・わかりやすい解説

材木座 (ざいもくざ)

中世,京都など都市や地方で材木の特権的な取引に従事していた商人団。木屋座とも称した。京都堀川,木津,奈良,鎌倉,堺など主要都市にその成立が確認される。京都堀川は平安末期には諸国から搬入された材木の交易場としてにぎわったが,座の成立を確認できるのは南北朝時代である。彼らは祇園社を本所とする神人(じにん)で,左方・右方の二つの組織に分かれており,室町時代には丹波近江,美濃,安芸,四国方面から送られてくる材木の特権的取引を行った。15世紀初頭の座衆は34名にも達した。平安末期,伊賀方面から木津川を下って送られてくる材木の陸揚地木津には,南都諸大寺の木屋所があって,木屋預・木守・寄人らが材木の取扱いに当たっていたが,鎌倉中期には材木座の成立が確認できる。彼らは興福寺一乗院の寄人身分をもち,伊賀のみならず土佐,阿波方面から水路送られてくる材木を,京都あるいは奈良に運んで取引を行った。奈良には店売をもっぱらにする材木座があった。しかし京都などでは材木の取引は座商人だけでなく,駕輿丁(かよちよう)ら座外の問屋・小売商人も行った。
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材木座 (ざいもくざ)

神奈川県鎌倉市の南東部,相模湾に面する地区。滑(なめり)川の河口から飯島崎に至る約1.5kmの海岸部で,西は由比ヶ浜に続く。地名は鎌倉時代に材木取引の場として設置された材木座に由来する。南東海上にある和賀江島(史)は1232年(貞永1)に築かれた港の跡で,当時の商業港としての繁栄ぶりがうかがわれる。海岸沿いに湘南道路(1975年無料開放)が走り,夏季は海水浴場としてにぎわう。付近に浄土宗大本山光明寺がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「材木座」の意味・わかりやすい解説

材木座
ざいもくざ

中世の材木商人の同業者組合。木屋座(きやざ)・榑座(くれざ)ともいい、材木の営業独占権をもった。木材の商品化は平安時代末期から始まり、材木座は材木の消費都市・集散地である京都堀川(ほりかわ)・木津(きづ)(京都府木津川市)・奈良・堺・鎌倉などに成立した。京都堀川は、丹波材の集散地であり、早くから材木交易の地として賑わった。この地に祇園社を本所(ほんじょ)とする神人(じにん)の材木座は南北朝期に成立し、洛中の材木商売を独占した。また、祇園会の神輿のための浮橋架設の義務を負った。木津は、古代より各寺院の木屋所が設けられ、木屋預(きやあずかり)・木守(きもり)・寄人(よりうど)等が材木を取り扱っていた。鎌倉時代中期には、興福寺一乗院の所管である西御塔寄人によって材木座が木津に成立した。室町時代、伊賀のみならず四国及び瀬戸内海沿岸各港から運び出される材木は、木津にて陸揚げされ、京都方面への販売と奈良の振売(ふりうり)を営業とするものがあった。

[松井吉昭]

『『豊田武著作集 第1巻 座の研究』(1982・吉川弘文館)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「材木座」の意味・わかりやすい解説

材木座
ざいもくざ

神奈川県南東部,鎌倉市南東部の地区。鎌倉時代に7座の1つ材木座がおかれたことが地名の起源。相模湾の小入江の湾奥,滑川左岸にあり,中心市街地の南東部にあたる。鎌倉時代には港が築かれて和賀江 (わかえ) と呼ばれ,諸国から船が集った。港の跡は和賀江嶋として残り,史跡に指定されている。海岸は砂浜をなし,夏季は海水浴場としてにぎわう。南部の光明寺は浄土宗関東大本山で,10月 12~15日のお十夜念仏には関東一円から信者が集る。

材木座
ざいもくざ

鎌倉,室町時代,材木商人の結成した専売組合。京都,奈良の邸宅や社寺建築用に,丹波から京都へ向け保津川を下る材木の集散に便利な京都堀川や,伊賀からの奈良向け材木の集散地である木津川畔の山城木津には,材木商人が集住,座を結成した。前者は祇園社に,後者は興福寺に所属した。座の結成に伴い,材木の仲買取引を扱う問丸が発生し,のちの材木問屋に発展した。

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世界大百科事典(旧版)内の材木座の言及

【鎌倉[市]】より

…頼朝墓前を東西に走る道路は金沢道で,古寺杉本寺,浄明寺,朝比奈切通しを経て東京湾岸の金沢八景へ抜ける。相模湾沿岸は,旧鎌倉市街地の中央を流れる滑川の河口によって二分され,その東岸が材木座海岸,西岸が由比ヶ浜海岸で,夏季は海水浴客でにぎわう。材木座には海岸近くに浄土宗光明寺があり,逗子市との境界海面上に日本最初の築港の跡といわれる和賀江島がある。…

【和賀江島】より

…鎌倉市の材木座海岸東端にある飯島崎の付け根から,西へ向かって海に突き出した中世の築港跡。現存する鎌倉時代の築港としては唯一のもので,酒匂(さかわ)川の河原石を積んで造られている。…

【木材市場】より

…木材が集合的に売買取引される市場。その歴史は古く,中世に栄えた材木座はその一つである。応永年間(1394‐1428)に京都,滋賀,四国,中国地方から集荷された材を扱う業者が京都に36軒あり,文明年間(1469‐87)には京都堀川に材木座が結成され,木材流通を担った例がある。…

※「材木座」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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