村上浪六(読み)ムラカミナミロク

デジタル大辞泉 「村上浪六」の意味・読み・例文・類語

むらかみ‐なみろく【村上浪六】

[1865~1944]小説家。堺の生まれ。本名まこと別号、ちぬの浦浪六。撥鬢ばちびん小説とよばれる通俗小説を多数発表した。作「三日月」「奴の小万」など。

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精選版 日本国語大辞典 「村上浪六」の意味・読み・例文・類語

むらかみ‐なみろく【村上浪六】

小説家。泉州大阪府)堺の人。本名信(まこと)。別号ちぬの浦浪六。報知新聞入社森田思軒の勧めで「三日月」を発表し世に出た。以来、町奴主人公に仁侠の世界を描く撥鬢小説(ばちびんしょうせつ)一世を風靡した。著「井筒女之助」「奴の小万」「安田作兵衛」など。慶応元~昭和一九年(一八六五‐一九四四

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改訂新版 世界大百科事典 「村上浪六」の意味・わかりやすい解説

村上浪六 (むらかみなみろく)
生没年:1865-1944(慶応1-昭和19)

小説家。大阪堺の生れ。本名信(まこと)。別号ちぬの浦浪六。早く父を失い,母の手で育てられた。少年時代よりさまざまな境遇に転変の生活を送ったが,1890年《郵便報知新聞》に入社,翌91年同紙の日曜付録〈報知叢話〉に《三日月》を発表,主人公の男だて三日月次郎吉の痛快な活躍ぶりが読者に喜ばれ,幸田露伴の作かとまでもてはやされた。その後,朝日新聞社の専属作家となり,多くの任俠小説を書き,明治20年代の〈撥鬢(ばちびん)小説〉の大家と仰がれた。〈撥鬢〉とは江戸中期の町奴(まちやつこ)の髪形からの命名である。他方,《当世五人男》(1896)や《八軒長屋》(1906-08)などの現代小説もある。晩年は創作より各種事業にむしろ熱意を注いだ。東京下谷の自宅で死去
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「村上浪六」の意味・わかりやすい解説

村上浪六
むらかみなみろく
(1865―1944)

小説家。大阪府堺(さかい)に生まれる。本名信(まこと)。別号ちぬの浦浪六、眠獅庵(みんしあん)主人。1890年(明治23)『報知新聞』の校正係となり、翌年森田思軒(しけん)編集長の勧めで処女作『三日月』を発表、好評を博す。『奴(やっこ)の小万(こまん)』(1892)、『後の三日月』(1894)、『侠客神髄妙法院勘八(みょうほういんかんぱち)』(1926)などは、町奴の男達(おとこだて)「侠」をモチーフとし、いわゆる「撥鬢(ばちびん)小説」とよばれた。また、純粋な激情をもって権力に立ち向かい、意地を貫いて死んでゆく『破太鼓(やれだいこ)』(1892)や、木賃宿の生活を描いた『八軒長屋』全三巻(1906~08)などが注目される。

[山崎一穎]

『『明治文学全集89 明治歴史文学集(1)』(1975・筑摩書房)』『木村毅著『明治文学夜話近代精神と文壇』(1975・至文堂)』

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百科事典マイペディア 「村上浪六」の意味・わかりやすい解説

村上浪六【むらかみなみろく】

小説家。本名は信(まこと)。別号,ちぬの浦浪六,眼獅庵。堺生れ。1890年《郵便報知新聞》に入り,翌年編集長森田思軒のすすめで書いた《三日月》が好評を得た。以後,《朝日新聞》の専属作家となるなどして,《井筒女之助》《奴(やっこ)の小万》《妙法院勘八》など,町奴を主人公とする〈撥鬢(ばちびん)小説〉を多く書き,大衆文学の先駆をなした。
→関連項目大衆文学都の花村井弦斎

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「村上浪六」の意味・わかりやすい解説

村上浪六
むらかみなみろく

[生]慶応1(1865).11.1. 和泉,堺
[没]1944.12.1. 東京
小説家。本名,信。小学校卒業後,県令や政治家の家に寄食して官途についたが,20歳でやめ,転々とした。 1890年報知新聞社に入社,翌年『三日月』を書き,幸田露伴の変名と目されるほどの好評を得た。次いで『井筒女之助』 (1892) ,『奴の小万』 (92) など巷の任侠者を多く描いて「撥鬢 (ばちびん) 小説」の名を生んだ。ほかに,明治の理想社会を描いた『当世五人男』 (96) がある。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「村上浪六」の解説

村上浪六 むらかみ-なみろく

1865-1944 明治-大正時代の小説家。
慶応元年11月1日生まれ。明治24年「郵便報知新聞」に連載した「三日月」で流行作家となる。のち「東京朝日新聞」にうつり,撥鬢(ばちびん)小説とよばれた一連の任侠ものを発表。昭和19年12月1日死去。80歳。和泉(いずみ)(大阪府)出身。本姓は兼松。本名は信(まこと)。別号にちぬの浦浪六。作品はほかに「当世五人男」など。

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