知恵蔵 「東京モーターショー」の解説
東京モーターショー
東京モーターショーが初めて開催されたのは、1954年、東京・日比谷公園にて。ちょうど高度経済成長期に差しかかっていたこともあり、戦後最大規模のショーとして盛り上がった。当時、車は庶民にとって手の届かない存在だったが、会期10日間で54万7千人が来場するという大盛況ぶり。254メーカーが出展し、ショーの総裁は高松宮殿下が務めた。その後、会場は後楽園競輪場、東京・春海と変遷し、89年(第28回)からは千葉・幕張メッセで開催されるようになった。
にぎわいがピークを迎えたのは、91年のショー。入場者が初の200万人を突破し、海外からも熱い注目を集める国際色豊かな展示会となった。また、混雑を解消するため、通路を広くし、車を車種別に展示するなどの対策が図られた。
東京モーターショーでは、その年を象徴するような新車が話題をさらうほか、会場に花を添える女性コンパニオンも注目の的。車よりも、コンパニオン目当てで訪れる来場者もいるほどだ。
バブル、少子化、不況など、時代の波をもろに受けながら、国際的な大イベントとしての地位を築いてきた東京モーターショー。だがその勢いも、2008年後半ごろから始まった世界的な自動車不況により、急激な減速を強いられている。第41回東京モーターショーでは、ゼネラル・モーターズ(GM)、フォード・モーター、クライスラーの米国ビッグスリーに加え、独フォルクスワーゲン、仏ルノーなど主要な欧州メーカーが不参加。いすゞ自動車など日本のトラックメーカー4社も出展しない。主催者である日本自動車工業会は、一般公開日を4日短縮し、展示面積を縮小するなどして、コンパクトな形で開催するとしている。
代わりに、国際モーターショーとしてにわかに活気づいているのが、中国で行われるモーターショーだ。中国は、いまや世界第2位の自動車大国に上りつめ、世界でも数少ない成長市場として注目を浴びている。それだけに、東京モーターショーには出展しない自動車メーカーも、上海で行われるモーターショーには出展を決めている。
(高野朋美 フリーライター / 2009年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報