東海道名所記(読み)とうかいどうめいしょき

精選版 日本国語大辞典 「東海道名所記」の意味・読み・例文・類語

とうかいどうめいしょき ‥ダウメイショキ【東海道名所記】

仮名草子。六巻六冊。浅井了意作。万治二~四年(一六五九‐六一)の成立・刊。楽阿彌という道心者の江戸から京への旅を、狂歌狂句、諧謔(かいぎゃく)をおりまぜてつづった道中記。駅ごとに里数、名所旧跡駅路の状況、風俗、産物などを詳細に記して旅行案内記も兼ねる。後の道中記・名所記に大きな影響を与えた。

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デジタル大辞泉 「東海道名所記」の意味・読み・例文・類語

とうかいどうめいしょき〔トウカイダウメイシヨキ〕【東海道名所記】

仮名草子。6巻。浅井了意作。万治年間(1658~1661)の成立。僧侶楽阿弥と連れの青年が狂歌やしゃれをおりまぜてつづる、江戸から京都までの道中記。駅間の里数・名所旧跡・産物などを詳細に記載。

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改訂新版 世界大百科事典 「東海道名所記」の意味・わかりやすい解説

東海道名所記 (とうかいどうめいしょき)

仮名草子。浅井了意作。6巻6冊。刊年未詳。1688年(元禄1),1708年(宝永5)に後印本がある。成立は1659年(万治2)ごろと思われる。楽阿弥という道心者が四国遍路から伊勢熊野を巡り,熊野浦から海路江戸に向かい鉄砲洲に上陸して江戸見物の後,京へ上り黒谷あたりに住もうと志し,芝口で会った若者と道連れになり,途中神社仏閣名所旧跡を訪ね,その由来を述べ,狂歌俳諧をものしつつ,京へ上るという,どちらかといえば必然性を欠いた緩い構成をとっている。同伴者が要請されるなど,その趣向は《竹斎》にならっている。五十三次の各駅ごとの里程を記し,道中の名所旧跡,風俗人情,宿泊の心得などを詳細に述べるという実用性と,おそらく俳諧精神の裏打ちによる軽妙洒脱な文章の保つ娯楽性とを兼ね備えた優れた仮名草子であり,近世中期のヒット作品である十返舎一九の《東海道中膝栗毛》はいうまでもなく,後代のおびただしい道中記,名所記などに多大な影響を与え,道中記ものの原点といってよいだろう。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「東海道名所記」の意味・わかりやすい解説

東海道名所記
とうかいどうめいしょき

仮名草子。六巻六冊。浅井了意(りょうい)作。1659年(万治2)成立。諸国を遍歴してきた青道心楽阿弥(らくあみ)が、まず江戸の名所を見物し、その後、連れの男とともに東海道の名所を見物し、気楽な旅を続けながら京に上るという構想のもとに、名所・名物の紹介、道中案内、楽阿弥らの狂歌や発句、滑稽(こっけい)談などを交えて、東海道の旅の実情を啓蒙(けいもう)、紹介した作品。主人公は『竹斎(ちくさい)』の系統にたち、娯楽性をも備えているが、同時に、「道中記」を十分に取り入れ、旅行案内として実用性をもったことが、読者に歓迎される一因となった。

[谷脇理史]

『野田寿雄校注『日本古典全書 仮名草子集 下』(1962・朝日新聞社)』『朝倉治彦校注『東海道名所記』全二巻(1979・平凡社・東洋文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「東海道名所記」の意味・わかりやすい解説

東海道名所記
とうかいどうめいしょき

仮名草子浅井了意作。6巻。万治2 (1659) 年頃刊。四国,伊勢,熊野から海路江戸に来た道心者楽阿弥が江戸見物を終え,京の黒谷に住もうとして芝口まで来たとき,二十四,五歳の大坂商人の手代と会う。2人は東海道を狂歌,俳諧を吟じ,諧謔に興じて上京する。『竹斎』の影響を受けた滑稽な名所記文学であるが,『竹斎』に比べると実用的色彩が濃く,五十三次各駅間の里数,橋の長さ,名所旧跡などの記事は当時刊行されていた『道中記』からそのまま写し取っている。『東海道中膝栗毛』など後代文学への影響が大きい。

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百科事典マイペディア 「東海道名所記」の意味・わかりやすい解説

東海道名所記【とうかいどうめいしょき】

浅井了意作の仮名草子。6巻6冊。刊年不詳,17世紀半ばか。楽阿弥という諸国遍歴の道心者が,江戸で連れになった若い大坂商人と,狂歌狂句を吟じながら都へ志すが,その途中の名所・旧跡・風俗などを描いた滑稽(こっけい)紀行文学。後の道中記,名所記への影響大。

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