改訂新版 世界大百科事典 「格付け」の意味・わかりやすい解説
格付け (かくづけ)
専門用語としては一般に社債の格付けratingについていうが,商品取引所などにおける格付取引でも使われる。
社債格付け
社債の発行条件や発行量を調整したり,投資者の投資判断に資するため,社債を一定基準により質的にランク付けすること。社債格付けはアメリカでとくに発達しており,ムーディズ社Moody's Investors Service Inc.(1903年創立。62年に信用調査で知られるダン・アンド・ブラッドストリート社の傘下に入った),スタンダード・アンド・プアーズ社Standard & Poor's Corp.(1916年以来,格付けに着手。現在の親会社はマグローヒル社)の伝統ある2社のほか,フィッチ・インベスターズ・サービス社Fitch Investors Service Inc.などの格付け機関がある。これら機関の格付けは銀行,生損保,年金基金等の機関投資家が社債に投資する際の適格性を判断する基準として採用されており,この格付けは投資者のための投資判断情報を提供するという機能を十分果たしている。その結果,社債の発行条件や発行量の調整にも資している。
日本では,(1)受託銀行と引受証券会社で構成される起債会の社債格付け,(2)日本公社債研究所(1979年日本経済新聞社内の組織として発足,85年に独立)の社債格付け,の二つが公表されている。(1)起債会は〈公募事業債の格付けに関する考え方〉に基づいて社債格付けを行う。これによると,まず適債基準によって公募社債の発行ができるかどうかが判断され,つぎに格付基準によって高い順にAA,A,BB,Bの四つの格に分類され,発行条件が決められる仕組みとなっている。この格付けは,社債発行を調整することにより,第2次大戦後の経済復興,高度成長を支える仕組みとして,資金配分的な機能を果たしてきたもので,アメリカにおける格付けのように,もっぱら投資者のための情報という役割を果たしてきたものではないとされる。近年,投資情報としての社債格付けの重要性が認識されるようになり,1977年の証券取引審議会基本問題委員会の報告〈望ましい公社債市場のあり方〉で,債券の格付けについて〈利害関係のない複数の第三者機関によって起債銘柄ごとに行われることが望ましい〉との考え方が打ち出された。こうした背景のもとに,第三者機関が行う投資者に対する投資情報としての社債格付けとして,(2)日本公社債研究所の社債格付けが行われることとなり,77年から転換社債,80年から普通社債の格付けを公表している。転換社債の格付けについては,82年1月から引受証券会社が発行条件決定の際の一要素としてこれを利用している。同研究所では,最も安全度が高いものから,利払いの遅延,不払いが生じているものまで,AAA,AA,A,BBB,BB,B,CCC,CC,Cの9ランクに格付けし,公表している。格付けにあたっては財務データだけでなく,その企業の成長力,技術力などを重要な判断材料とし,格付けの結果は《日本経済新聞》《日経公社債情報》に掲載されるほか,市況情報センターの《QUICKビデオ-BM(ボンド・マネー)》などで報道されている。
執筆者:鳴滝 善計
格付取引
ある商品の特定の銘柄を標準品として決めておいたうえで,売買約定し,実際の受渡しの際はあらかじめ定めた受渡し代用の銘柄(供用品)を提供することができる取引のこと。主として商品取引所での取引形態だが,繊維,雑穀などでは同業者どうしの一般的な売買でもみられる。標準品に対する供用品の価格差を決めることが格付けで,標準品より上位にあるものを格上(かくうえ),下位にあるものを格下(かくした),同値のものを同格と呼ぶ。
執筆者:米良 周
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報