榛名山(読み)はるなさん

精選版 日本国語大辞典 「榛名山」の意味・読み・例文・類語

はるな‐さん【榛名山】

群馬県中央部にある複式火山上毛三山の一つ。中央火口丘榛名富士(一三九一メートル)の外側に、外輪山の臥牛(ねうし)山・烏帽子岳・掃部ケ岳(かもんがだけ)(一四四九メートル)などが連なる。火口原湖に榛名湖、北東腹に伊香保温泉がある。

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デジタル大辞泉 「榛名山」の意味・読み・例文・類語

はるな‐さん【榛名山】

群馬県中部にある二重式火山妙義山赤城山とともに上毛じょうもう三山をなす。最高峰は外輪部にある掃部かもん岳で標高1449メートル。中央火口には榛名富士と榛名湖とがあり、北東麓に伊香保温泉がある。

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日本歴史地名大系 「榛名山」の解説

榛名山
はるなさん

群馬県のほぼ中央に位置し、群馬郡・北群馬郡・吾妻あがつま郡にまたがる広い裾野をもつ。古来山岳信仰の聖地として知られてきた。那須なす火山帯に属する典型的な複式火山で、東は利根川、北は吾妻川、南はからす川に囲まれる。赤城・妙義とともに上毛三山の一つ。外輪山はかなり開析され、最高峰一四四九メートルの掃部かもんヶ岳をはじめ、すずり岩・鬢櫛びんぐし山・烏帽子えぼしヶ岳・臥牛ねうし山・磨墨するす峠・天目てんもく山・氷室ひむろ岳・天神てんじん峠などに分れている。その内側に中央火口丘の榛名富士一三九〇・七メートルとじやヶ岳がある。榛名富士の西側カルデラの低い部分に火口原湖の榛名湖が水をたたえ、外輪の東側に浅間山(水沢山)相馬そうま山・ふたッ岳の寄生火山が噴出する。榛名火山最後の活動は六世紀末といわれる二ッ岳のもので、二ッ岳北東の伊香保いかほ温泉はこの活動の名残と考えられる。榛名湖を源とする沼尾ぬまお川が東北に流れて吾妻川に注ぐ。伊香保温泉・伊香保神社は北東斜面中腹七五〇メートルの北群馬郡伊香保町にあり、南側中腹榛名町には榛名神社があり門前町を形成している。

榛名山は幾つかの峰々の総称であるが、古くは伊香保とよばれていた。厳秀(いかほ)の義と考えられ、「万葉集」巻一四の東歌のなかに数首が載る。

<資料は省略されています>

第三首の「ねろ」の「ろ」は東歌特有の感動の意を添える接尾語。「伊香保嶺」は「五代集歌枕」「八雲御抄」にあげられる。「ハルナ」の地名は、前掲「万葉集」の第一首目にある「榛原はりはら」がのちに榛野はりのとなり、ハルノ、ハルナに転じたものとする説がある。榛名の名称は「延喜式」神名帳の群馬郡に伊香保神社とともに榛名神社とみえるのが早い。伊香保嶺に伊香保と榛名の二社が鎮座し、中世以降の榛名信仰の隆盛によって榛名神社と一体となって榛名山とよばれるようになったと考えられる(榛名町の→榛名神社。なお、赤木文庫本「神道集」巻七(上野国第三宮伊香保大明神)には伊香保山の神がみえ、また、伊香保大明神の力で伊香保嶽から風が一吹きして車軸のような雨が降った話が載る。

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改訂新版 世界大百科事典 「榛名山」の意味・わかりやすい解説

榛名山 (はるなさん)

群馬県の中央部にある複式成層火山。赤城山,妙義山とともに上毛三山と呼ばれる。《万葉集》には伊香保嶺(いかほね)の名で詠まれる。関東平野北部に広がるなだらかなすそ野の上に開析のすすんだ急峻な山体をのせる。山頂部には東西に長い長円形のカルデラがあり,その中に火口原湖の榛名湖,円錐形の山容をもつ中央火口丘の榛名富士(1390m)がある。カルデラ壁をつくる外輪山は最高峰の掃部ヶ岳(かもんがたけ)(1449m)をはじめ烏帽子ヶ岳(えぼしがたけ),鬢櫛(びんぐし)山,天目山などからなる。南麓の室田,宮沢付近は,カルデラ形成時に流出した軽石流が厚く堆積し広い台地をなしている。山体東部にある二ッ岳(1343m)は旧火山体上に噴出した溶岩円頂丘で,最も新しい火山活動によるものである。二ッ岳の噴火は記録にはないが,このとき噴出した軽石火山灰が山麓の古墳群をおおっていることから,5世紀末から6世紀初めにかけてと推定されている。軽石火山灰の噴出に次いで斜面の河谷に軽石流が流出し,最後に流動性の少ない溶岩によって溶岩円頂丘が形成された。軽石火山灰の降下はおもに北東方向で,赤城山を経て尾瀬沼にまで達している。この火山灰は北東斜面の渋川市の旧伊香保町付近で数m,赤城山北西斜面で約1mの厚さで地表をおおい,この地域の農業開発を遅らせている大きな原因となってきた。しかし軽石層はコンクリートブロックの原料として採掘利用されている。

 榛名山の東麓,南麓は,軽石流により河谷が埋積されたため比較的平たんで,放射谷や湧泉により水利のよいところでは水田も開け,多くの集落が立地している。緩斜面は桑畑が卓越し,日本有数の養蚕地帯となっている。北部や西部の山麓は多くの放射谷に刻まれ,わずかな平たん地に第2次大戦後の開拓地が分布するにすぎない。旧伊香保町には二ッ岳北麓に泉源をもつ伊香保温泉がある。火口原は榛名高原とも呼ばれる草原で,ここから榛名富士山頂へはロープウェーが通じている。榛名山の南を刻む榛名川の河谷には,古くから山岳信仰の参拝者を集めてきた榛名神社がある。
執筆者:

榛名山の信仰的要素は赤城山のそれと類似する点が少なくない。たとえば,《神道集》に伊香保姫が赤城御前の妹と説かれているのをはじめ,女人の入水伝承,榛名と赤城の神戦譚,近世期の御師(おし)制度の発達と広範な信仰圏の形成など,榛名・赤城両山には共通点が多い。ということは両山の信仰が常に対比される形で展開してきたといえよう。しかし古代においては榛名という名がみえず伊香保嶺といわれ,《延喜式》神名帳に〈榛名神社〉があり,初めて榛名の名が登場する。この神社は中世には満行(まんぎよう)権現(本地は勝軍地蔵)と称し,また榛名山寺(巌殿(がんでん)寺,榛名寺)ともよばれて修行者の霊場となった。なかでも鎌倉の鶴岡八幡宮とも関係がある頼印大僧正が住した14世紀が,榛名山信仰の高揚してきた時期といえよう。近世期の御師制度の発達によって関東地方はもとより広範な地域に講集団が形成されているが,雨乞いや筒粥(つつがゆ)神事にみるように作神としての信仰がその中核にあり,俗に〈雨乞い神社〉ともいわれる。
執筆者:

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百科事典マイペディア 「榛名山」の意味・わかりやすい解説

榛名山【はるなさん】

群馬県高崎市北西にある活火山。最高峰は外輪山の掃部ヶ岳(かもんがたけ),標高1449m。第三紀層を基盤とし,円錐形の旧成層火山の上に相馬岳,榛名富士,二ッ岳などの溶岩丘が噴出。《万葉集》の伊香保嶺に相当し,中世以降榛名信仰が盛んであった。山頂の榛名湖まで,北東麓の伊香保温泉を経て渋川市から県道が通じる。
→関連項目赤城山吾妻[町]群馬[県]群馬[町]渋川[市]上毛三山高崎[市]榛名[町]前橋[市]箕郷[町]吉岡[町]

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「榛名山」の意味・わかりやすい解説

榛名山
はるなさん

群馬県のほぼ中央部、利根(とね)川を挟んで東の赤城山(あかぎやま)に対する火山で、上毛三山(じょうもうさんざん)の一つとして県民に親しまれている。山体は二重式火山で、外輪山は輝石(きせき)安山岩で構成され、円錐(えんすい)型をなし、開析されてヤセオネ峠、臥牛(ふせうし)山、烏帽子(えぼし)ヶ岳、鬢櫛(びんぐし)山、掃部(かもん)ヶ岳(1449メートルで最高)、天神(てんじん)峠、天目(てんもく)山、磨墨(するす)峠などに分かれ、その内側のカルデラは東西4キロメートル、南北2.5キロメートルの楕円(だえん)形で、そこに角閃(かくせん)安山岩で構成される中央火口丘の榛名富士(1390メートル)や火口原の沼ノ原、火口原湖の榛名湖がある。沼ノ原から榛名富士までロープウェーが通じ、眺望に優れる。また、外輪山東部の山腹に相馬山(そうまさん)、水沢(みずさわ)山、二ッ岳の寄生火山があり、船尾(ふなお)滝がかかっている。二ッ岳の爆発(600年ころ)による軽石(かるいし)が北東麓(ろく)一帯に分布し、コンクリート・ブロックの原料として採掘されている。

 山腹は耕地化が進み、東斜面の折原(おりはら)、六本松(ろっぽんまつ)にはリンゴの特産があり、西斜面には標高900メートルまで第二次世界大戦後開かれた開拓地がみられる。南腹の榛名神社は式内社で権現(ごんげん)造の壮麗な社殿が巌脚(がんきゃく)に建てられ、東腹に伊香保温泉(いかほおんせん)がある。

[村木定雄]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「榛名山」の意味・わかりやすい解説

榛名山
はるなさん

群馬県中部にある円錐形二重式火山(→成層火山複式火山)。最高峰は外輪山の掃部ヶ岳(かもんがたけ。1449m)。活火山で,那須火山帯に属し,妙義山赤城山とともに上毛三山の一つ。外輪山は楕円形で東西約 4km,南北約 2.5km,中央火口丘は榛名富士(1391m)。外輪山は輝石安山岩,中央火口丘は角閃石安山岩からなる。中央火口丘西側に火口原湖榛名湖があり,外輪山の東腹には二ッ岳,水沢山などの寄生火山がある。二ッ岳から噴出した軽石は,北東麓一帯に分布し,建築用ブロックの原料となる。広い裾野は標高 600m内外まで耕作され,桑畑のほか,ナシ,ブドウ,リンゴなどの果樹園もある。南東斜面の相馬ヶ原自衛隊の演習場。東斜面の中腹に伊香保温泉がある。山頂一帯は榛名県立公園に属する。

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知恵蔵mini 「榛名山」の解説

榛名山

群馬県北部にある活火山群の名称。同じく群馬県の赤城山・妙義山と並ぶ上毛三山の1つで、南西麓の榛名神社など著名な寺社が多くあり、古くから山岳信仰を受けてきた。いくつもの山岳からなる複雑な形状で、最高峰は掃部ヶ岳(標高1449メートル)。山頂部のカルデラ湖である榛名湖と榛名富士(標高1390.3メートル)が名勝として有名で、周辺には伊香保温泉を始めとした幾多の温泉地がある。

(2012-12-13)

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事典・日本の観光資源 「榛名山」の解説

榛名山

(群馬県高崎市・渋川市・吾妻郡東吾妻町)
ぐんま百名山」指定の観光名所。

榛名山

(群馬県高崎市・渋川市・吾妻郡東吾妻町)
上毛三山」指定の観光名所。

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