櫓・矢倉(読み)やぐら

大辞林 第三版の解説

やぐら【櫓・矢倉】

が原義〕
城や館の門の上、あるいは敷地内に設けた物見・防戦のための高楼。近世の城郭では、一層から四層の塗込造りの建物が多く、城内の要所、城壁や城門の上に設けた。
木材などを高く組み上げて造った構造物。 「火の見-」
歌舞伎・人形浄瑠璃・相撲・見世物などの興行場の入り口に高く組み上げた構築物。江戸時代には官許の興行権の証であった。
こたつの、木で組んだ枠。中に熱源を置き、布団を支える。 「 -炬燵ごたつ
大型和船の上部構造物の総称。本来、戦国時代に発達した軍船の上部構造物のことだったが、江戸時代では商船の上部構造物をも同様に呼んだ。
「櫓投げ」の略。
「矢倉囲い」の略。
矢など、武器を納めておく倉。また、物品を収納する倉庫。 「物は-に積み満てて/宇津保 祭の使
[句項目] 櫓を上げる

出典 三省堂大辞林 第三版について 情報

精選版 日本国語大辞典の解説

や‐ぐら【櫓・矢倉】

[1] 〘名〙 (矢を納める倉の意から)
① 武器を納めておく倉。つわものぐら。兵庫。
※書紀(720)大化元年八月(北野本訓)「兵庫(やクラ)を起造(つく)りて、国郡の刀(たち)(よろひ)弓矢を収め聚め」
② 城壁などの上に造った建物で、諸方を展望して偵察したり、矢や弾丸を発射して防戦の用としたりしたもの。〔大智度論天安二年点(858)〕
※園太暦‐貞和四年(1348)二月三日「吉野悉没落、全分無人、矢倉少々相残」
③ 材木や鉄材などを組み合わせて高く造った構築物。祭礼・盆踊りで、太鼓や笛を演奏したり、歌をうたったりする構造物など。「火の見櫓」
④ 室町時代以降、軍船の上に設けられた展望および攻防を兼ねた高い構築物。大船は船首・中央・船尾の三か所に設けた。戦国時代に発達した安宅船(あたけぶね)や関船などの大型軍船は総やぐらという、船首から船尾まで通す独特の形式に発達した。また、近世の荷船でも船体後半に設ける屋形を矢倉(櫓)と呼び、船尾の手造(てづくり)を艫矢倉とか船頭矢倉という。ふなやぐら。
※信長公記(1598)六「舟の長さ三十間、〈略〉艫舳に矢蔵を上げ」
⑤ 江戸時代、劇場の正面入り口の上に造った構築物の一つ。初めは官許を得た印として設け、次第に客寄せのための場所となり、後には全く形式的なものになった。三方に櫓幕を張り、正面には劇場の紋、左右には座元の姓名などを染めた。転じて、劇場の意に用いた。
※評判記・役者評判蚰蜒(1674)ゑびすや座惣論「舞台の軒ばに玉をつらね〈略〉やぐらのまくに梅のかほなして」
⑥ 相撲場で高く造った建築物。相撲の始終をしらせる太鼓を打つ場所。
※浄瑠璃・関取千両幟(1767)二「響く櫓のとうからと打ち仕舞うたる太鼓より」
⑦ こたつに用いる木組みのわく。上にふとんを掛けて用いる。こたつやぐら。
※俳諧・七車集(1694か)「身を投るやうに合せの絵を捨て〈轍士〉 櫓のゆがむ炬燵寒けし〈仙華〉」
⑧ 馬の鞍の左右につけるもので、こたつやぐらを仰向けにしたようなもの。多く子どもを乗せるが、おとなが乗って荷物を中央につけることもある。
※雑俳・柳多留‐七(1772)「伴頭はやぐらへ乗って来た男」
⑨ 「やぐらおとし(櫓落)①」の略。
※武家拾要記「今の長柄と云ふは古の矢倉落しなり。古の矢倉は今の矢倉に比すれば甚だ疎略なるものなり」
※浄瑠璃・雪女五枚羽子板(1708)下「やぐらにかけてはりま投げ、上ぐる団扇や扇の芝に、はや三番の勝相撲」
⑪ 将棋で、櫓囲いをいう。また、その戦法。
※洒落本・娼妓絹籭(1791)自序「煙花を将棊の局面に設娼妓の駒下踏の往来を観るに、〈略〉堅心の石田も崩れ。櫓(ヤグラ)に囲とも忽破る可恐」
[2] 「やぐらした(櫓下)(二)」の略。
※浄瑠璃・神霊矢口渡(1770)四「根津・音羽はいふに及ばず。氷川から補裙・楼(ヤグラ)

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