毟・挘(読み)むしる

精選版 日本国語大辞典 「毟・挘」の意味・読み・例文・類語

むし・る【毟・挘】

[1] 〘他ラ五(四)〙
① 物の本体に密着しているものを、むりやりに引きちぎったり、引き抜いたりする。
散木奇歌集(1128頃)雑上「田上に侍りし比、かたひなたに居て、手のかさむしりてよめる」
※宇治拾遺(1221頃)四「この雉子〈略〉生けながら毛をむしらせければ」
② 綿などをつまみ広げて、ふっくらとさせる。つばなかす。
※宇津保(970‐999頃)国譲下「きぬ・綿を見れば、いとおほかり。〈略〉ごたちも、皆賜はりて引き散らしてむしりなどす」
③ 身を引きちぎって細かくする。また、肉や魚の身を骨からはがしてほぐす。
※古今料理集(1670‐74頃)五「干かれい〈略〉むしりてとは、焼て則身計むしりて用る事也」
④ むりやりに奪い取る。
西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈総生寛〉一五「巡査(おまはり)さんにつかまって屯所(たむろじょ)へ留られておいらを呼びによこしやっがった時は苦しい銭をむしりやアがったぜ」
⑤ (多く「口をむしる」の形で用いて) かまをかけて尋ねる。→口をむしる
談義本・教訓乗合船(1771)一「船中を見わたせば、色々の人物、よきはなしもと、そぞろよろこび、出ふねからそろそろと、人々の口をむしりかけ」
[2] 〘自ラ下二〙 ⇒むしれる(毟)
[補注](一)②は近世以後、「つばな」の形状にする意の「つばなかす」によって表わすことが多い。

むし・れる【毟・挘】

〘自ラ下一〙 むし・る 〘自ラ下二〙 物の本体に密着しているものが、引きちぎれたり、引き抜かれたりする。
碑文(1923)〈横光利一〉「彼らの頭髪は引けば茹だった芋毛のやうにぽくぽくと挘れて来た」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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